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場所と時間が溶けていくような感覚にしてくれる曲。原田郁子さんが選ぶ、旅のプレイリスト。July 13, 2025

&Premium140号(2025年8月号)「心を整える、日本の旅」より、ミュージシャンの原田郁子さんが作ってくれた、心を穏やかにする旅で聴きたいプレイリストを特別にwebサイトでも紹介します。

場所と時間が溶けていくような感覚にしてくれる曲。

「Bella」Jerskin Fendrix/映画『哀れなるものたち』から。ピアノの音色が "ぐにゃん"とする、内省的で映像的な曲で、惹かれます。『Poor Things-Origi nal Motion Picture Soundtrack』に収録。
「Bella」Jerskin Fendrix/映画『哀れなるものたち』から。ピアノの音色が"ぐにゃん"とする、内省的で映像的な曲で、惹かれます。『Poor Things-Original Motion Picture Soundtrack』に収録。
「Passarinha」Bala Desejo/私にとって”好きなリズム”とは、やわらかくしなるようにバウンドしている、思わず体を動かしたくなるような音。出合えると嬉しい。『Sim Sim Sim』に収録。
「Passarinha」Bala Desejo/私にとって”好きなリズム”とは、やわらかくしなるようにバウンドしている、思わず体を動かしたくなるような音。出合えると嬉しい。『Sim Sim Sim』に収録。
「Tarde, De Tu Lado」Mono Fontana/古代の人や、動物たちの気配。このアルバムを初めて聴いたとき、静かに衝撃を受けました。どこかわからない夢の中を泳いでいるよう。『Cribas』に収録。
「Tarde, De Tu Lado」Mono Fontana/古代の人や、動物たちの気配。このアルバムを初めて聴いたとき、静かに衝撃を受けました。どこかわからない夢の中を泳いでいるよう。『Cribas』に収録。
「Moni Mambo」Eternal Docteur Nico, Orchestra African Fiesta/今いる町と、コンゴの町が混ざり合う。とても豊かな瞬間。旅先で旅を妄想することがある。『Merveilles Du Passé 1967』に収録。
「Moni Mambo」Eternal Docteur Nico, Orchestra African Fiesta/今いる町と、コンゴの町が混ざり合う。とても豊かな瞬間。旅先で旅を妄想することがある。『Merveilles Du Passé 1967』に収録。
「Wild Marionberries」Omni Gardens/歌のない世界がちょうどいいときってある。シンセの音色が、旅に似合う気がします。エンジニアの奥田泰次さんに教えてもらった『Golden Pear』から。
「Wild Marionberries」Omni Gardens/歌のない世界がちょうどいいときってある。シンセの音色が、旅に似合う気がします。エンジニアの奥田泰次さんに教えてもらった『Golden Pear』から。
「Nijuuisseiki No Mori (UP-05) 」岡田拓郎、duenn/時空がめくれた向こう側から、きれいな粒子の音がたくさん流れ込んでくるようなイメージ。『都市計画 (Urban Planning) 』に収録。
「Nijuuisseiki No Mori(UP-05) 」岡田拓郎、duenn/時空がめくれた向こう側から、きれいな粒子の音がたくさん流れ込んでくるようなイメージ。『都市計画(Urban Planning)』に収録。
「Space Orphans」青葉市子/ライヴでこの曲がはじまると、涙が出てしまう。ふだんはあまり聴かないようにしているけれど、こないだ旅先で聴いてみたらやっぱりダーッと泣いてしまった。
「Space Orphans」青葉市子/ライヴでこの曲がはじまると、涙が出てしまう。ふだんはあまり聴かないようにしているけれど、こないだ旅先で聴いてみたらやっぱりダーッと泣いてしまった。
「This Came From The Sky」Don’t, Cosmo Sheldrake/声が描く空間と、グルーヴが気持ちいい。物語性、遊び心があって、散歩中だったら、もう少し歩いてみようかなという気持ちになる。
「This Came From The Sky」Don’t, Cosmo Sheldrake/声が描く空間と、グルーヴが気持ちいい。物語性、遊び心があって、散歩中だったら、もう少し歩いてみようかなという気持ちになる。
「Angelus Novus」cero/ピアノのリフの中に、どこか懐かしい郷愁が広がっている。輪唱みたいにコーラスが追っかけてくるところが好き。旅先から届いた手紙のような歌。『e o』に収録。
「Angelus Novus」cero/ピアノのリフの中に、どこか懐かしい郷愁が広がっている。輪唱みたいにコーラスが追っかけてくるところが好き。旅先から届いた手紙のような歌。『e o』に収録。
「Avril 14th」Aphex Twin/リチャード・D・ジェイムスのピアノが美しい。ドラマティックすぎずニュートラルでエレガント。どんなときに聴いてもそっと寄り添ってくれる。『Drukqs』に収録。
「Avril 14th」Aphex Twin/リチャード・D・ジェイムスのピアノが美しい。ドラマティックすぎずニュートラルでエレガント。どんなときに聴いてもそっと寄り添ってくれる。『Drukqs』に収録。

コロナ禍を経て、少しずついろんな場所でライヴができるようになり、今は、本番前後に数日、その町に滞在することが楽しみのひとつでもあります。旅先では、五感が開く。食べたもの、見たもの、触れたもの、聴いたもの。歩いているときや電車に揺られているときに、歌詞やアレンジのアイデアを思いついたり、制作中のデモを聴いて、いろんな景色に当てはめてみて、音や言葉を微調整したり、ということもやります。耳が疲れないように、移動中は大体イヤフォンをつけていて、気分によって、音楽を聴いたり、ラジオを聴いたり。音は鳴っていないけど、ノイズキャンセリングの代わりに使っていることも多いですね。たまたま知って「いいな」と思った曲をお気に入りフォルダに入れていくのですが、ランダムに聴いていると、ふと流れてきた曲と目の前の情景とが重なって、映画のワンシーンのように見えることがあって、ハッとします。例えば、路面電車の車内にバーッと西陽が差し込んで、人々のシルエットが光っているように見えたり、路地裏で、学校帰りの子どもたちが走っていく後ろ姿を見送ったり、商店街で、野菜を売っているおばあさんの手の皺に惹かれたり。ふとした瞬間が、躍動的に感じたり、美しいなぁと感じたりすることがありますよね。だんだん自分がどこにいるのか、わからなくなってきて、場所と時間が溶けていく。そんなワープするような感覚というか、境目がなくなっていくところが、音楽の素晴らしさ、魅力だと思います。選びきれないですが、旅先で聴きたいな、と思う10曲を選んでみました。Bon Voyage!

原田郁子さん

原田郁子ミュージシャン

クラムボンのヴォーカル、ピアノを担当。ソロ活動のほか、現在はフィッシュマンズのライヴプロジェクトにも参加。Blu-ray『クラムボン 添春編 {映像集}』が発売中。

illustration : Shapre text : Katsumi Watanabe

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