MUSIC 心地よい音楽を。
場所と時間が溶けていくような感覚にしてくれる曲。原田郁子さんが選ぶ、旅のプレイリスト。July 13, 2025
&Premium140号(2025年8月号)「心を整える、日本の旅」より、ミュージシャンの原田郁子さんが作ってくれた、心を穏やかにする旅で聴きたいプレイリストを特別にwebサイトでも紹介します。
場所と時間が溶けていくような感覚にしてくれる曲。
コロナ禍を経て、少しずついろんな場所でライヴができるようになり、今は、本番前後に数日、その町に滞在することが楽しみのひとつでもあります。旅先では、五感が開く。食べたもの、見たもの、触れたもの、聴いたもの。歩いているときや電車に揺られているときに、歌詞やアレンジのアイデアを思いついたり、制作中のデモを聴いて、いろんな景色に当てはめてみて、音や言葉を微調整したり、ということもやります。耳が疲れないように、移動中は大体イヤフォンをつけていて、気分によって、音楽を聴いたり、ラジオを聴いたり。音は鳴っていないけど、ノイズキャンセリングの代わりに使っていることも多いですね。たまたま知って「いいな」と思った曲をお気に入りフォルダに入れていくのですが、ランダムに聴いていると、ふと流れてきた曲と目の前の情景とが重なって、映画のワンシーンのように見えることがあって、ハッとします。例えば、路面電車の車内にバーッと西陽が差し込んで、人々のシルエットが光っているように見えたり、路地裏で、学校帰りの子どもたちが走っていく後ろ姿を見送ったり、商店街で、野菜を売っているおばあさんの手の皺に惹かれたり。ふとした瞬間が、躍動的に感じたり、美しいなぁと感じたりすることがありますよね。だんだん自分がどこにいるのか、わからなくなってきて、場所と時間が溶けていく。そんなワープするような感覚というか、境目がなくなっていくところが、音楽の素晴らしさ、魅力だと思います。選びきれないですが、旅先で聴きたいな、と思う10曲を選んでみました。Bon Voyage!

原田郁子ミュージシャン
クラムボンのヴォーカル、ピアノを担当。ソロ活動のほか、現在はフィッシュマンズのライヴプロジェクトにも参加。Blu-ray『クラムボン 添春編 {映像集}』が発売中。
illustration : Shapre text : Katsumi Watanabe