MUSIC 心地よい音楽を。
老舗ジャズ喫茶のDNAを未来へ。鹿児島・山下町『LUCK APARTMENT』。November 25, 2024
カルチャーのあるカフェや喫茶店は、音楽との思いがけない出合いを手渡してくれるかけがえのない存在です。2024年11月20日発売の特集「カフェと音楽」では、全国の話題店によるアルバムリストが登場。ここでは、鹿児島・山下町『LUCK APARTMENT』を紹介します。
老舗ジャズ喫茶のDNAを未来へ。
鹿児島市役所そばのコーヒースタンドは、実はこの地域にとって大切な役割を担っている。それは、かつて市内にあったジャズ喫茶『門』のレコードコレクションと音響設備を生かしながら継承すること。以前は『コーヒーイノベート』がこの場所で店を営んでいて、移転したものの音響設備はここに残し、同店に引き継がれた形だ。もちろん真空管パワーアンプ〈LUXMAN〉の「MQ70」もコントロールアンプ〈LUXMAN〉の「CL40」も、スピーカー〈ALTEC〉の「The Voice of the Theatre」も現役。ただし、古い機器なので故障はしばしばある。ゆえに店主の福永寛尚さんにとって日々音を流し、状態を確認するのは日課だ。万が一修理が必要な場合、費用は客からの募金を充てており、観光客など広く募金に協力的だという。約半世紀にわたり音楽のバトンが繋がっている。
『LUCK APARTMENT』オーナー、福永寛尚が選ぶ、店を形づくるレコード15枚。
『After Midnight』Nat King Cole
1957年作。軽やかなピアノのタッチ、伸びやかな歌声に加え、ジャズバンドの演奏に気分が上がる。「明るい曲調が多く、週末の朝にかけることが多いです」
『Live!』Lou Rawls
時折笑いが起きる語りからの臨場感ある歌声はライヴ音源ならでは。「意識せず聴いていても楽しい気分に。『門』のマスターが以前レコード鑑賞会で選んだことでも印象深い」
『Getz / Gilberto』Stan Getz, João Gilberto
カフェカルチャーに興味を持った店主が20代の頃から聴いていた一枚。「デジタルでは何度も聴いていましたが、レコードだと一音一音の厚みが違う」
『Jazz Samba』Stan Getz, Charlie Byrd
『Getz / Gilberto』からの流れで店主が若い頃から愛聴。「ゲッツの歌うようなテナーサックスの演奏、チャーリー・バードの軽快なギターが心地よい」
『What’s New』Bill Evans With Jeremy Steig
ビル・エヴァンスをリーダーとしたピアノトリオにフルート奏者のジェレミー・スタイグを加えたカルテット。「フルートという楽器の概念が変わる」
『Live』Donny Hathaway
ハサウェイのソロアルバムとしては最大のヒット。「What's Goin' On」、ファンクの名曲「The Ghetto」など、テンションが上がる曲揃い。「ライヴ音源なのがまた良い」
『At The Cafe Bohemia Volume 2』The Jazz Messengers
ジャズドラマーのアート・ブレイキーが長く率いたバンド。結成当初のオリジナルメンバーによるライヴを2枚のアルバムとしてリリース。
『Mack The Knife-Ella In Berlin』Ella Fitzgerald
名ジャズシンガー、1960年のベルリン公演を収録し、グラミー賞も受賞。「美しく伸びやかな歌声はどんなときでも心地よい空間を演出してくれる」
『Chet Baker Sings』Chet Baker
チェット・ベイカーの代表作であり、歌手として高い評価を得たのもこちら。「とある映画でトランペッターとしての彼を知り、本作で歌声にも魅了されました」
『Underground』Thelonious Monk
グラミー賞の最優秀アルバムカバー賞を獲得した、ジャケットのアートワークも有名な本作。サックス奏者との共演、ピアノトリオ編成など曲ごとに趣向が変わる。
『Soul Station』Hank Mobley
1960年発表、テナーサックス奏者のハンク・モブレーの代表作。ワンホーンなのでおおらかなテナーの音色が生き、ピアノ、リズム隊のビートも相まって非常に軽やか。
『Live At The Bijou』Grover Washington Jr.
1977年にフィラデルフィアで行ったライヴ音源。「20代前半のお客さんがストリートダンスで使い、原曲を聴きたいと、リクエストされた一枚」
『LUCK APARTMENT』鹿児島・山下町
鹿児島県鹿児島市山下町12−12 一二三ビル1F ☎なし 6:30〜18:00(土日〜16:00) 火休 鹿児島市電市役所前電停より徒歩2分。毎月第4金曜20:30〜22:30にレコード鑑賞会を開催。
photo : Shinnosuke Yoshimori edit & text : Tsutomu Isayama