MUSIC 心地よい音楽を。
音楽とコーヒーがある幸せ、をシンプルに味わう。東京・桜新町『Autumn』。November 25, 2024
カルチャーのあるカフェや喫茶店は、音楽との思いがけない出合いを手渡してくれるかけがえのない存在です。2024年11月20日発売の特集「カフェと音楽」では、全国の話題店によるアルバムリストが登場。ここでは、東京・桜新町の『Autumn』を紹介します。
音楽とコーヒーがある幸せ、をシンプルに味わう。
世田谷の閑静な住宅街で、朝8時から漏れ聴こえてくる心地よい音。それにつられるように訪れる人が絶えない『オータム』は、2022年11月のオープンながら、すっかりローカルに馴染んだ様子。「あくまでコーヒーショップなので、選曲はジャンル問わず様々。雨の日には、切なく沁みるソロピアノを流すこともあれば、ポップなネオアコで気分を上げることもあります。意識せずともお客さんの耳に音楽が入るように、気持ち、ボリュームは大きめに」と、店主でバリスタの林翔さん。スピーカーは繊細で伸びやかなサウンドを鳴らす〈Taguchi〉のブックシェルフ型を採用し、音がきれいに響くように壁は珪藻土で仕上げた。開店時、最初に訪れた客に合わせてレコードに針を落とすと、音色の美しさに驚いて会話が始まるという。「まだまだ勉強中」と謙遜するも、音楽とコーヒーの話は尽きない。
『Autumn』オーナー、林 翔が選ぶ、店を形づくるレコード15枚。
『Songs And Instrumentals』Adrianne Lenker
アメリカ人女性シンガー・ソングライターによる2020年作。コロナ禍にアナログ機材のみ使用して山小屋で制作。アコギの音色とともに環境音が混ざる。
『Another Voyage』The Ramsey Lewis Trio
ジャズピアニスト、ラムゼイ・ルイスがトリオ名義で1969年にリリース。「アップテンポで、お客さんが増えてきた頃に流すと店が生き生きとするんです」
『Little Miss Sunshine(OST)』V.A.
同名映画のサントラ。「大好きな映画です。物語の展開に合わせた緩急が激しい曲もあるのですが、A面は割と緩やかで、かけっぱなしでOKな聴き心地のよさ」
『Inside Voice』Joey Dosik
ピアノやサックス奏者としても活躍するソングライターが、’70年代のソウルをベースに制作。甘く伸びやかな歌声が気持ちいい。「昨年、店にも遊びに来てくれたんです」
『Autumn』George Winston
故郷モンタナの秋をイメージしたピアノソロ。「友人が彼の命日に贈ってくれました。1曲目『Colors / Dance』で軽やかに始まり、次第に秋の寂しさに包み込まれる」
『Shape Of Things To Come』George Benson
切れ味のいいメロウなギターに惚れ惚れする、〈A&M〉からの1968年作。ハービー・ハンコックやロン・カーターなどの名ジャズプレイヤーも参加。
『Freudian』Daniel Caesar
ゴスペルシンガーの親の元で育った、トロント出身シンガーのデビューアルバム。2017年作。「H.E.R.と共作した、切なく美しいラブソング『Best Part』が特にお気に入り」
『Café Bleu』The Style Council
「ザ・ジャム」解散後のポール・ウェラーとキーボードのミック・タルボットによる1st。R&Bやソウル、ジャズなどの要素を盛り込んだ、カフェミュージックの定番。
『The First Of A Million Kisses』Fairground Attraction
エリオット・アーウィットのジャケット写真でも知られる、ネオアコの名盤。「サウンドはポップでヴォーカルはキュート。場が明るくなる」
『Winelight』Grover Washington, Jr.
時代を超えて愛されるスムースジャズの名盤。「未聴のお客さんが意外と多い。街のコーヒー屋がいい音楽を知るきっかけになれたらと思ってかけてます」
『Specials』The Specials
イギリス発、パンクとスカを融合した”2トーンスカ”の代表的バンドによる、素朴でエネルギッシュな一枚。「音楽も服装も、とことん格好つけていく姿勢がかっこいい」
『Jerusalem』Emahoy Tsege-Mariam Gebru
エチオピアの修道女でありピアニスト、その過去の演奏を集めた一作。99歳の誕生日を記念して発売。「派手ではないが、叙情的で何度も聴きたくなる」
『Autumn』東京・桜新町
東京都世田谷区弦巻5−6−16 弦巻リハイム1F ☎なし 8:00〜17:00 火水休 桜新町駅から徒歩10分強、上町駅からは15分ほど。秋にオープンしたため『Autumn』という名前に。
photo : Ayumi Yamamoto text : Nozomi Hasegawa