BOOK 本と言葉。
写真家・長島有里枝さんとガラス作家・山野アンダーソン陽子さんによる往復書簡が一冊に。
書籍『ははとははの往復書簡』が発売。April 30, 2022
年齢も住む場所も考えも違う二人の、真摯な対話。
日本で暮らす写真家の長島有里枝さんと、スウェーデン在住のガラス作家・山野アンダーソン陽子さん。年齢も住む場所も考えも違う二人の「母」が子育てをテーマに始めた手紙のやりとりが、アーティストとして、コロナ禍の生活、親との関係性、歳をとること……など、さまざまなテーマへと広がっていく。そんな二人の往復書簡をまとめた書籍『ははとははの往復書簡』が発売に。
「子どもを産む前、わたしは自分のことをもっとずっといい人だと思っていた気がします。それから、自分がこんなにもいろいろと苦手で、『普通』が苦しかったり、うまくできなかったりするとも思っていませんでした」(長島さん)
「子どもが生まれて、どうにか『普通』をしてあげたいと思うのですが、諦めて見失ってしまった『普通』ってなかなか取り戻せないものですね。ましてや、私の住んでいる地域はストックホルムの中でもとりわけリベラルで、かなり自由な社会ということもあり、『普通』が何なのか本当によくわからなくなります」(山野さん)
「法律とか社会ルール的には、親が与え子どもは受け取るという関係性が良しとされている気がするけれど、人対人と考えれば、与えるだけ、頼るだけなんていう関係性はありえないと思う」(長島さん)
「ちなみに、家事と育児はまったくの別物なので、産休・育休を取っているからといって、家事を全部しなくてはいけないなんてまったくないです。家事はもれなくみんなについてきます」(山野さん)
本書での二人の発言を見ると、正直に自分の言葉で対話が重ねられているのが分かる。たとえ立場や考えが異なり、噛み合わないことがあったとしても、物事と相手と真摯に向き合うことの大切さ。変化の大きい混沌の時代に、二人の対話の中から明日を生きるヒントを見つけてみたい。
BOOK INFORMATION
著者:長島有里枝・山野アンダーソン陽子
定価:1,870円
版元:晶文社