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スタイリスト・近田まりこさんにとって「美しいもの」とは。October 03, 2025
「美しい」を見つめ直すためのヒントを探った、&Premium143号(2025年11月号)「美しい、ということ」より、スタイリスト・近田まりこさんの暮らしに寄り添う"美しいもの"を特別に紹介します。



近田まりこさんにとって「美しいもの」とは。

〝美しいもの〞というお題をもらったときにまず思ったのが、最近は詩のようなものに格別な美しさを覚えるということでした。詩は言葉を使いながら、言葉では出来上がっていない世界の様相を映し出します。同じように、ものにも言葉ではないけれど、ロゴスや物語性を宿す美しさがたくさんあります。けれど、それも超えて、感覚が広がったり、世界や宇宙に触れたり、説明できない何かを感じたりするものもある。人が作った音や香り、形や手触り、舌触りのなかにも、詩はひそんでいます。ここで取り上げた3点もそう。耳かきがケースに入っているときのカラカラという音、数字の持つ美を説明できそうなツボ押しの形、手のひらサイズの石の中に、世界や宇宙がすっぽりと入っているような感覚、そして、一方向に流れるだけではない時間を内包しているような波動。それらは詩の世界観と通じ、捉えどころはないものの、確実に存在してる美の気配を感じ取ることができます。
近田まりこスタイリスト
1980年代から’90年代にかけて雑誌『オリーブ』の人気スタイリストとして活躍。雑誌やCMなどでスタイリングを行い、独特の世界観をつくり出している。
photo : Satoshi Yamaguchi edit & text : Wakako Miyake