アントニ・ガウディThis Month Artist: Antoni Gaudi / October 10, 2016
河内 タカ
未だ終わらない建築
アントニ・ガウディの「サグラダ・ファミリア」
スペインのバルセロナにある有名な建築といえば….. まあ、ほとんどの人がこの大聖堂のことを思い浮かべるはずです。そう、アントニ・ガウディの「サグラダ・ファミリア」のことです。そして、この世界的に最も象徴的な宗教建築は、グラナダのアルハンブラ宮殿やマドリッドのプラド美術館を抜いてスペインで最も観光客を集める超人気スポットでもあるのです。
サグラダ・ファミリアとは、 「サグラダ=聖」と「ファミリア=家族」を意味し、マリアとヨゼフとイエスの三人のことを指しているそうですが、この建造にはすでに130年以上の年月が費やされているにもかかわらず、今もなお建設が進められているという「未完の建築」としても知られています。しかし、ミラノのドゥオーモ(大聖堂)を作るのに約500年、ケルン大聖堂にいたっては実に600年以上の年月がかかったことを踏まえれば、着工時点の1882年で300年はかかるだろうと予想されていたのが(つまり完成予定が2182年!)、現段階では2026年の完成を目指しているとのことで、比較的早いペースということになるんですけどね(笑)。
このサグラダ・ファミリアの設計は、もともとはフランシスコ・ビリャールなる別の建築家に任されていました。しかし、わずか1年で教会側と折り合いがつかなくなり、当時ほとんど無名建築家だったガウディに大役が回ってきます。敬虔なカトリック信者であったガウディは、30代終わりころから約40年以上を費やし、特に人生最期の15年間をこの大仕事に全精力をつぎ込んだのですが、結局、生前の彼が見ることができたものとは、地下聖堂部分とファサード、そして18本作られるべき尖塔のうちの最初の1本のみでした。
しかも、ガウディはちゃんとした設計図が紛失したか、またはそもそも詳細を書き残していなかったため、没後は模型や職人による伝承や大まかな外観のデッサンなどを基づいて、今に至るまで作業が続けられてきました。また、この建物は常に称賛されていたわけではなく、少しずつ出来上がっていくにつれてだんだんと評価されていったという背景もありました。奇抜すぎるこの芸術的建築物が非難にさらされ、紆余曲折ありながらも、これまでどうにか継続されてきたのも、その時々の職人たちが「ガウディの意思を汲み取り、いつか必ず完成させよう!」というモチベーションを抱き続けられるような強力な磁力みたいなものがあったからで、実はそんなところがサグラダ・ファミリアをさらに魅力的なものにし、また時代を超えて愛されてきたんじゃないかと思うのです。
特徴的なオーガニックな曲線や細部にわたる装飾、そして自然からのモチーフを取り入れるユニークな様式を得意としたアントニ・ガウディ。その背景には幼少期に患ったリウマチによって走り回れなかったために、おのずとひとり小さな生き物や草花をひたすら観察していたことが、独創的ともいえる装飾を生み出したと言われているんですが、ガウディの没後100周年目にあたる10年後に、この偉大な聖堂の美しく完成された姿を見せてくれるのを今から楽しみにしておくとしましょう。