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Book 43 / November 11, 2016 『神様2011』 川上弘美(講談社)

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主人公が三つ隣の305号室に越してきたくまに誘われて散歩に出る一日を綴った短編「神様」。やおよろずの神様と人との交流を描いた短編集『神様』(1998)に収録されている作品です。人間ではない、異形の存在を、日常の中で当たり前のように受け入れて、少し古風な会話をしたり、一緒にごはんを食べたりするその心持ちの在り方は、とても魅力的に感じます。そして、その後に続く「神様2011」は、3.11の後に書かれたもう一つの短編です。「防護服」や「セシウム」といった言葉を差し挟みながら、それでも淡々と進む日常に、「当たり前」がガラリと変わった原発事故後の世界のありさまが印象深く残る一冊です。


Book 42 / November 04, 2016 『枕草子』 清少納言(岩波文庫)

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言わずと知れた日本を代表する古典文学。細やかで冷静な観察眼により描かれた文章からは、その時の情景や作者の心の様子が、遥かな時間を軽々と飛び越えて、匂い立つように伝わってきます。自然や日常の描写のみずみずしさには、ただただハッとするばかり。清少納言が仕えた中宮定子とのやり取りも、優しさや茶目っ気たっぷりのほほえましさに満ちています。現代の日常で使うことのない古語に、豊かな背景と意味合いを感じられるのは、日本語を母語とする私たち日本人だからこその特権だと思います。千年以上前に生きた女性のたおやかな感性と、日本語の持つ美しさを味わう喜びを感じられる一冊です。


Book 41 / October 28, 2016 『株式会社家族 私も父さんに認めてもらいたい篇』 山田かおり 山田まき・絵(リトルモア)

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ファッションブランド〈QFD〉を主宰する著者が綴る、家族と日々のこと。近しいからこそ、少し面倒で、ウェットで、そして愛しい、家族という存在を、カラッと心地良い文章で伝えてくれます。飼っていた猫が死んでしまったり、妹と久しぶりの喧嘩をしたりといった、少し切ないはずのエピソードも、著者の言葉選びにやられて、読みながら顔がほころんでいる自分に気づきます。日常のささやかな出来事や家族との思い出を、こんな切り取り方で記録することができたら、どんなにか素敵だろうと思います。著者の妹・山田まきさんのクスッとくるイラストや、ページを繰るたびに質感が変わる紙の手触りも、本を読む楽しさを存分に感じさせてくれる一冊です。山田ワールドにはまったら、一作目『株式会社家族』もぜひ。


Book 40 / October 21, 2016 『思い出トランプ』 向田邦子(新潮社)

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日常の中にふいに立ち現れる男女の機微を描いた13の短編。誰しも持っているはずの、弱さ、後ろめたさ、狡さ、猜疑心を抱える登場人物たちに愛しさを感じるのは、きっと、それを切り取る作者のふくよかな眼差しがあるからでしょう。そんな作者によって描かれる女性たちは、やはり、なんともチャーミング。そしてその奥に垣間見える秘めた感情が、女性という生き物のすさまじさや不可思議さを感じさせます。日常の仔細を端的に伝える描写に、物語の情景が鮮やかに立ち現れてくるような作品です。


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福岡県北九州市にある6坪の本屋。新刊・古書・リトルプレス・雑貨等を取り扱う。一人の読者のための大切な一冊が見つかるような場所を目指す。
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