ひみつの坪庭コレクション
骨董を蒐集する店主のセンスが光る、〈ア リトル プレイス〉に備わる市中の山居。ひみつの坪庭コレクション vol.01November 30, 2023
京都の店々に密やかに備わる坪庭は、この街に暮らす人々の美意識を象徴するような場所。京都に出かけたら見に行きたい、小さくも美しい庭を紹介します。
骨董に彩られた市中の山居。
―ア リトル プレイス―
白い暖簾が掛かれば開店の印。大正時代に建てられた端正な町家がギャラリーに生まれ変わったのは2022年8月のこと。庭も含めた改装を手がけたのは二人の店主のひとり、庭師の成井大甫さん。「縁あって使わせてもらうことになった町家は、ずっと尊敬してきた華道家・西川一草亭と、実弟の画家・津田青楓の生家。趣あるしつらえを生かすため手を加えすぎずに改装を。庭の重心を低くしたのは、畳に座って品物を見てもらうスタイルのため。背景としての庭を仕立てました」と成井さん。奥に続く坪庭を竹垣で仕切り、元からあったトチノキと奈良時代の礎石、安政と年号が刻まれた石の玉垣で構成された庭。礎石の上に降り立ったかのように、中国・漢時代の副葬品だった鳥を置いたのは、骨董コレクターでもある成井さんのセンス。周りには苔ではなく常緑の吉祥草を植えた。「思い描いたのは市中の山居。表から奥へと入るにつれ、山の中へ入っていく雰囲気にしたくて」。本来は土壁に隠れた、竹小舞を少し覗かせた壁で切り取れば、一幅の絵を見るよう。
成井さんが選ぶ骨董や〈紀[KI]−SIÈCLE〉などを扱う。
▽『ア リトル プレイス』
京都市中京区押小路通御幸町西入ル橘町610
☎なし
11時~19時 不定休
営業日時はインスタグラム@_a_little_place_で確認を。
photo : Yoshiko Watanabe illustration : Junichi Koka edit & text : Mako Yamato