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わたしの好きな岡山。高さ169mの小さな山で、大自然を感じて深呼吸。写真と文:中川正子 (写真家) #2November 10, 2025
ここ数年は「山だ、山だ」と言っている。山に興味などなかったわたしが。
すごい登山家になったわけではない。近所に大好きな低山ができたのだ。
できた、と書いたけれど、山だから当然、はるか昔からあった。わたしがその魅力に気づいていなかっただけ。
東京から岡山に越してきて10年以上が経ち、やっと気づいた。コロナ禍がきっかけだ。
学級閉鎖でエネルギーを持て余していた息子と、その友だちを連れて、一緒に登ってみた。たった高さ169mの小さな山。とんでもないエネルギーを持っていた。そしてすぐ、虜になった。

緩やかな坂道を登る。険しい場所はほとんどない。公園の延長のような感じではある。でも、とても山らしい。登山口に一歩踏み入れた途端、サバービア出身のわたしにとっては、“大自然”が広がる。様々な色相の緑が重なり、鳥たちが輪唱し、足元はふかふかの落ち葉のじゅうたん。一歩ずつ集中して歩いているうちに、瞑想状態になる。ハイな気持ちで頂上に着く。いつもの岡山市を見下ろす。
なんて、気持ちがいいんだ。
山の中腹に、唐突に大きな岩がある。そこによじ登るのがとにかくお気に入り。靴と靴下を脱ぎ捨て、大の字で横たわる。オーバーヒートした脳内のごちゃつきが、すーっと岩に吸い込まれていく。視界を、繊細な筋状の雲がゆったりと流れていく。鳥たちが面白いリズムで鳴いている。

今日も紫外線が強いだろう。美容賢者には怒られるだろうけど、もうちょっと、この光を全身で浴びていたい。最高のリトリートという感じがする。岩をひとり占めして、緩む。
岡山に暮らす良さはたくさんあるけれど、あえてトップ3を挙げるなら、この山がランクインするだろう。わたしのQOLの高さに寄与している。自宅から歩いて5分。公園に行くような気軽さで訪れている。
地元で育った人たちは、小学生の時に遠足で来ていたそう。今でも、幼稚園児たちをよく見かける。それくらいやさしい山。市内の中心部から簡単に行ける距離にあるなんて、関東平野育ちのわたしからすると奇跡みたいだ。
今日も自宅から山が見える。仕事に集中しすぎて、ちょっと煮詰まるとサクッと山に。遠くから来た友人を連れて行くこともある。この“ちょっと山”ができる贅沢よ。
今年の夏は、さすがに暑すぎて足が向かなかった。涼しくなってきた今、また頻繁に登っている。
ひさしぶりでも山は平然と迎えてくれる。
いつでもクールな顔でそこにいる。
それがとても、すき。

写真家 中川 正子
































