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積読本と、ステージを往復する。写真と文:曽我部恵一 (ミュージシャン) #1October 09, 2025

前略。

ぼくは今、2度目の中国ツアーに来ています。

こちらは蒸し暑くて、街はやみくもな熱気にあふれています。

外をちょっと歩いただけで、汗だくになってしまいます。

積読本と、ステージを往復する。写真と文:曽我部恵一 (ミュージシャン) #1
積読本と、ステージを往復する。写真と文:曽我部恵一 (ミュージシャン) #1

サニーデイ・サービスの前回の中国ツアーは3都市を回るものでしたが、今回は上海、北京、広州、深圳、杭州の5か所に増えました。

日程も、移動距離も長くなるから、家から本を何冊か持っていきました。そう、いつの間にか溜まってしまった積読本を消化するのにも、最適の日々です。ステージと移動以外は喉のためにも、なるべく外出せず、ホテルに閉じこもって本を読んでいるつもりです。

積読本と、ステージを往復する。写真と文:曽我部恵一 (ミュージシャン) #1
積読本と、ステージを往復する。写真と文:曽我部恵一 (ミュージシャン) #1

ロシアの作家、ミハイル・ブルガーコフの『巨匠とマルガリータ』(河出書房新社)は、日本で半分くらい読んでいた本。成田空港から上海に向かう飛行機の中でもこれを読んでいました。分厚いけど、なぜかどんどん読めてしまいます。

悪魔と人間の邂逅から始まる、大騒動。書かれたのは1929年から1940年にかけてで、作者の存命中には発表されることはなかったそう。なんでも、ソ連当局から反体制だと弾圧されたらしいです。常識の中で生きる人間と、善も悪も全てを超越した悪魔が出会う瞬間は、このコンプライアンスでがんじがらめの現代に読むと、いっそうスリリングなのかも。

ドタバタとも言える、悲喜劇がたどり着く場所。それは意外にも穏やかで……。

物語に熱中していると、いつの間にか窓の外の空が白み始めます。

ああ、ライブに備えて、そろそろ眠ることにします。

では、また。


ミュージシャン 曽我部 恵一

曽我部恵一
そかべ・けいいち/1971年8月26日生まれ。乙女座、AB型。香川県出身。'90年代初頭よりサニーデイ・サービスのヴォーカリスト、ギタリストとして活動を始める。1995年に1stアルバム『若者たち』を発表。2001年の12月、 アメリカ同時多発テロ事件に触発され制作したシングル「ギター」でソロデビュー。2004年、自主レーベル〈ROSE RECORDS〉を設立し、インディペンデント、DIYを基軸とした活動を開始する。以後、サニーデイ・サービス、ソロ活動と並行し、プロデュース・楽曲提供・映画音楽・CM音楽・執筆・俳優など、形態にとらわれない表現を続けている。

sokabekeiichi.com

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