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趣味や習い事の話:「強くなりたい」。写真と文:横尾香央留 (手芸家) #1May 06, 2025
縫ったり編んだり直したり、ひとりこもり作業する日々。編み物や裁縫は仕事であると同時に趣味のようでもある。それとはまた違った類の趣味や習い事について、この連載では書いてみようと思います。
勤めていたアトリエを辞めてすぐに「なにか習い事がしたい、できれば身体を動かしたい、あわよくば強くなりたい」という思いから、まず門を叩いたのはカポエイラだった。
何かでチラッと見ただけで詳しいことはわからないが、あの動きができるようになったらかっこいいなぁ、という軽い気持ちでカルチャースクールの体験レッスンを申し込んだ。
始まってすぐ、いや、着替えている段階ですでに気がついてしまった。
「こ、これはなんと陽気な人達の集いなのだ……」
眩しい笑顔で円になり、中央に出てきた2人が踊るように戦う。それだけではなく順繰りに楽器がまわってきて奏で歌い、それ以外の人は手拍子を打ち、時々「ウェィ」とか「フォッ」みたいな発声で盛り立てる。
で、できない……。わたしには、それできません!
先生からステップを習っているときに「バレエやってたでしょ? わかっちゃうんだよね〜」と若干鼻で笑われた時点で、卑屈なわたしのカポエイラ人生が始まらないことはほぼ確定していたが、最後までそれが覆るほどの覚醒は起きず、憧れは憧れのまま教室を後にした。
その後、叩いた門は合気道。市の体育館で行われている教室で、同じく興味を持っているという友人を誘い見学に行くと、シンとした空気の中動作音だけが響き、見ているこちらの背筋も伸びる。

生徒さんの稽古に励む姿や、礼儀を重んじる姿勢にときめき迷わず入会。2回目の稽古後、友人の妊娠が発覚し早々に1人になってしまったが、まだときめき残るわたしは続けることにした。
しかしようやくここで、合気道は知らない相手とも“組む”必要があるという事実に直面する。
人と接しない仕事を好み選んできたわたしにとって、ほぼ初対面のおじさまと「両掌を合わせて兎跳びの横バージョンで体育館の端から端まで飛び続ける」という稽古を筆頭に、相手との距離が非常に近い数々の稽古にときめきよりも苦手意識が上回り、苗字の刺繍入り道着が手元に届くと同時に道場を後にした。
子どもの頃に得意だったのは上り棒、縄跳び、ハードル。体を動かすことにおいても1人で完結できることが好きだったことをこの後に及んで思い出し、無理はせず、自分の身の丈に合った習い事を探すことにした。
edit : Sayuri Otobe
手芸家 横尾香央留
