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“ひとさま”の家族に会いに行く旅の話。写真と文:前田エマ (モデル) #4August 25, 2025
私の好きな旅は、“ひとさま”の家族に会いに行くことだ。新しいエッセイ集『過去の学生』の中では、3組の家族に会いに行った時のことを書いている。
ひとつは、京都の山の中で服作りをしている〈iai(イアイ)〉の居相さん家族。本の中では2018年の冬の出来事を綴っているが、昨年の夏にも彼らのもとを訪れ、新しく建てた家やアトリエ、庭や畑を見せてもらった。

もうひとつは、瀬戸内海に浮かぶ小さな島・男木島で『ダモンテ商会』を営むダモンテさん家族。農業や養鶏、狩り、ベーカリー、カフェ……なんでも自分たちでやってみる家族で、私は何度か住み込みでアルバイトをさせてもらったことがある。

最後は、数年前にまだ幼いふたりの子どもを連れて、オランダでの生活を始めた女性の友人だ。知り合いがいるわけでも、その地に仕事があるわけでもないのに、ひとりで行ってしまった。そんな彼女の生活を知りたくて、オランダまで会いに行った。

私の両親は結婚をしておらず、私は父親とは一緒に暮らしたことがない。それでも仲は良いほうだと思うし、とても大切に育てられてきた誇りのようなものがある。大人になればなるほど、私の中で“家族”というものへの興味が大きくなっている。
「家族は他人」だと教えられて育った。それは、たとえ家族であっても、我々はひとり一人の個人である、という考えからきた言葉なのだが、これを体現するのは実は難しいことではないだろうかと最近感じている。いつか自分が家族を持った時に、そういった振る舞いができるのだろうか。
私にとって、“ひとさま”の家族の生活にお邪魔することは、学びの時間でもあるのだ。
edit : Sayuri Otobe
モデル 前田 エマ

まえだ・えま/1992年神奈川県生まれ。東京造形大学在学中にウィーン芸術アカデミーへ留学。モデル、写真、ペインティング、ラジオパーソナリティ、キュレーションや勉強会の企画など、活動は多岐にわたり、エッセイやコラムの執筆も行っている。連載中のものに、オズマガジン「続、とりとめのない日々のこと。」、me&you「前田エマ、韓国の服にあう。」がある。現在、Podcast『日々の句読点。』ではパーソナリティーを務める。著書に小説集『動物になる日』(ちいさいミシマ社)、『アニョハセヨ韓国』(株式会社三栄)、そして初のエッセイ集『過去の学生』(ミシマ社)が2025年6月17日に刊行。