&EYES あの人が見つけたモノ、コト、ヒト。
夏に聴きたい名曲と、音楽が紡ぐ思い出。 写真と文:靱江千草 (〈バウト〉デザイナー) #4August 29, 2025
連載の締めくくりとなる今回は、夏の郷愁を最も感じるキース・ジャレットの名盤や、両親の思い出ソングなど、4曲を紹介します。

Summer Of Nostalgia💿
#18 Pat Metheny Group 「Last Train Home」
曲の序盤から、まさしく風を切って走り抜ける列車を思わせるサウンドが、そっと聴き手を招き入れる。解き放たれていくレールと車輪の音が途切れぬ中、目を閉じると声の束が聴こえる。声と柔らかな光の中で、聴き手はあらためて自分の感傷を思い起こす。終始変わらないスネアのブラシが続いて、私たちをどこまでも連れて行ってくれるかのような壮大さ。
これまで聴いたことのない、このグループのリーダー、パット・メセニーの世界観は唯一無二なのだと。初めて聴いたのは確か30代の頃、とても感動しました。緑の大草原を抜けていくような光景を思い描くので、私の中では夏の名盤とさせていただいています。
去年、『BLUE NOTE TOKYO』で来日公演をしていたのですが、見逃してしまいました。生のライブは未経験。いつか一度は体感したいアーティスト。
#19 Mike Oldfield 「Moonlight Shadow」
歌詞の内容は、愛する恋人を亡くした彼女の切ない心を歌っているそうですが、印象的なメロディラインと透き通るような女性ボーカルのサウンドは、一度聴いた時から頭から離れない、パーソナルな曲となりました。
この文章を綴っている、2025年8月9日はまさしく満月の夜。月をいつまでも見ていていたくなる、私の美しいお月見ソングです。
#20 Keith Jarrett 「Country」
数々聴いてきたキース・ジャレットの名盤の中で、なぜか何度となく涙が溢れてしまう曲。今は聴きすぎて涙までは……ですが、滅多に飲まないお酒を口にしたら感情が昂るかもしれません。
今回のプレイリストの中で最も“郷愁”らしさを感じていただけるような、優しく心を撫でてくれるような音楽です。
具体的に「何が」ということは無いのですが、「Country」という名の通り、故郷を思い出すような感情になる旋律で、お盆や帰省シーズンに聴きたくなるのです。
そして、日中に聴くにはディープですが、深夜のクリエーションに没入できる名盤作品『Death and the Flower』もおすすめ。アルバムジャケットの薔薇を生と死に見立てて、人間は生まれながらにして死に向かうという儚さと尊さが長尺の曲に込められていることを知った時の感動たるや。キースの計り知れない情熱的な芸術性にも触発されるのです。ですが、私が知っているのはこれらを含めソロコンサートのライブアルバム4〜5枚程度。これから、キースのほかの名盤をもっと深掘りしていきたいです。
#22 Frank Sinatra 「Strangers In The Night」
どさくさに紛れて夏とは無関係の、両親の思い出ソング。両親が東京で結婚して、その時代にフランク・シナトラが来日し、コンサートに行ったというエピソードを聞いてから、たまに彼の歌を聴くようになりました。なかでもこの曲が1番好きで、最後にエントリーさせていただきました。至極、私的なノスタルジーです。
私のルーツに最も影響を与えているのは、父と母のファッション。ここにリスペクトと感謝の気持ちを勝手ながら綴らせていただきます。父は29年前に他界しており、どこかで見ていてくれているかなと考えたり。会いたいですね、とても。
これまで、私の拙い「気まぐれ白書」(いつの間にか名前が変わっていますが)にお付き合いいただき、大変ありがとうございました。
〈バウト〉というファッションブランドは、日本の縫製、素材、型紙における技術を信頼できる職人さんの手によって作られる丁寧な服でありながら、同時に今の時代感や、源流となるカルチャー、音楽からのイマジネーションを注いでいます。
ミニマルでもどこかエモーショナル、そんな感覚が伝わる方には伝わると良いな……という思いでクリエーションしています。
今回の貴重な機会を通して、〈バウト〉のアイテムが少しでもみなさんの眼に触れることが増えたら嬉しいです。〈バウト〉では、展示会に合わせてそのシーズンに合わせたプレイリストも制作していますので、よろしければSpotifyにてご覧くださいませ。
これからも、どうぞよろしくお願いいたします。
〈バウト〉デザイナー 靱江 千草

→ bowte.jp