&EYES あの人が見つけたモノ、コト、ヒト。
細野晴臣さんの5曲を含む、夏の郷愁を誘うプレイリスト。 写真と文:靱江千草 (〈バウト〉デザイナー) #2August 15, 2025
1記事目に続いて、今回も極私的な思い出とともに「Summer Of Nostalgia」のプレイリストを紹介します。今回は#6のビートルズの曲から。
Summer Of Nostalgia💿
#6 The Beatles 「Penny Lane-Remastered 2009」
自分の誕生日は真夏日。音楽への興味を一気に広げてくれた友人たちがバースデーを夜通し祝ってくれ、立ち寄る店々で流してくれたり歌ったりしたビートルズの曲。なかでも、「Penny Lane」は皆で歌ったキラキラした記憶が残っています。その時の私は、口ずさむことすらできなかったのですが、後から覚えて空で歌えるようになると、気持ちの良い曲に。そこからビートルズをはじめとするジョン・レノンの生き様、奥深さ、そして天才的な楽曲に触れ、魂に届くほど熱烈に好きになるきっかけとなりました。この時のご縁は、私の一生の宝。音楽への興味の基盤を作ってくれたこの仲間たちには、とても感謝しています。
彼らには、名店のミュージックバーにも軒並み連れて行ってもらいました。新宿の老舗バー『どん底』、『新宿末廣亭』近くにあった今はなきロックバー『ローリングストーン』、そのほかの名店など……。行く先々で、それまで聴いてこなかった、そして欲していた古き良き名盤を浴びるように吸収しました。
その仲間のうちの1人が、池袋でミュージックバー『Bar SORA』を営んでいます。こだわりのお酒と良質な音を楽しめるので、よろしければぜひに。そんなわたくしも豊島区池袋出身です。

#7 Lou Read 「Walk On The Wild Side」
この曲とは、最も長いお付き合い。ルー・リードとヴェルヴェット・アンダーグラウンドは、10代の頃から憧れ続け、今もなお永遠にかっこいいバンドです。いつ聴いても良い。そしてそれは、私の永遠のテーマです。
多感だったあの頃の私は、“ハグレ者”という反骨精神を抱き、見た目以上に心の中は反抗的でした。そんな自分にとって、ルーのポエトリーな曲(際どい歌詞でもなおさら)永遠にかっこよく、頭に残っています。
#8 Sly & The Family Stone 「If You Want Me To Stay」
2025年6月9日、スライ・ストーンことシルヴェスター・スチュアートが82歳でロサンゼルスで息を引き取りました。直近の悲しみ……。彼の曲を初めて教えてもらった時の衝撃たるや。いわゆるブラックミュージックだと思って聴いたら、とんでもないグルーヴと、ファンク、ロック、ソウルが混ざったようなエネルギーに満ちた音楽に魅了されました。当時にしては珍しい人種の多様性や社会性を体現したバンド。その革新的な存在は、いつの時代も心に刻まれます。
私が持っていたアルバムは、この曲が収録されている『Fresh』とアメリカ国旗のジャケット『There’s A Riot Goin’ On』。静かでかっこよく、地味に好きな曲。スライが亡くなって、改めて名盤から聴き直しています。

そして、細野晴臣さんは5曲をエントリー。
わたくしの趣好は雑食で、好きなものはノンジャンル。今回は、郷愁を感じさせる夏のメロディとして選びました。細野さんといえば、今年で活動55周年。個人的に勝手ながら、おめでとうございます! 代表作の「トロピカル3部作」は後になってから知りまして……細野さんの何が好きかって、ご自身のお人柄です。終了してしまったJ-WAVEのラジオ番組「Daisy World」や、そして現在のInterFM「Daisy Holiday!」の愛聴者です。「Daisy World」では、熱烈なハガキを送って読んでいただいたことも。これが、私史上最高の自慢話です(録音したカセットはどこかへ行ってしまいましたが……)。音楽への絶大な熱い灯火を持ちながら、会話はいつもお茶目でフランク。ステージでもユーモアを大事にされていて、天才的で誰もが憧れるアーティストでありながら、押し付けがなく、チャーミングで居て慎ましい。その上品さとの軽やかな姿勢に、自分もそうありたいと憧れずにはいられません。自分の力で細野さんとお会いできるようなレベルの人間になりたかったけれど、今世ではまだまだ。日本でも、もう少しライブをやってほしいなと思います。
#9 「Tutti Frutti」
リズムがとても心地よい一曲。細野さんのスタッカート? というのかな。曲名のごとく、ずっとリズムを口ずさんでいる歌。2019年11月30日、細野さん音楽活動50周年記念プロジェクトの国際フォーラム公演で、この曲を堪能しました。原曲は、リトル・リチャードが1955年に発表した、R&R(ロックンロール)誕生期の古い曲。エルヴィス・プレスリーの演奏だと、とてもロカビリーな感じですが、細野さんのジャジーなアレンジはどうしたらこんな素敵なものになるのだろうと益々興味が尽きません。細野さんの『Tutti Frutti』を聴くと、とにかく幸せになります。
#11 「熱帯夜」
細野さんを代表する「トロピカル三部作」のひとつ、『トロピカル・ダンディー』から。まさに今夏も熱帯夜。緩くゆったりと、冷風の効いた部屋で寝るまでの時間を楽しむ時にぴったり。全体に波の音が流れ、至極癒されます。
#14 「ウォーカーズ・ブルース」
「そのままの君でともかく行きなよ」と、背中をポンと軽く押してくれる冒頭の歌詞が大好きなパワーをくれます。今夏、パリの街をとにかく歩き続けた時にも、ミラノの街にもマッチした。少しの嫌なこともどこかへ行って、気分良く歩き始められるとても素敵な曲。
#17 「東京Shyness Boy」
細野さんの低音ボイスが生かされた、絶妙な抑揚の曲調。うだるような暑さを楽しめる私のテンション向上ソング。
真夏の掃除は窓を閉め切るのも嫌なので一旦開けるのですが、退けない熱風が部屋の中に。滝汗をかきながらも気持ちよく掃除できるソング集の第一位がこの曲。ちなみに、二位は山下達郎の「Ride On Time」。
#21 「恋は桃色」
甘い題目に反して、歌詞の言葉に救われた日々がありました。
なんでもないやさしい言葉が淡々と郷愁をまとい、自分の思い悩みはなんでもないこと、どーでもいいことさー♩と 何度もリピートして慰めてもらいました。
〈バウト〉デザイナー 靱江 千草

→ bowte.jp