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コーヒーとお茶とおやつ、あとは……。編集後記「コーヒーとお茶と、わたしの時間」October 20, 2025

コーヒーとお茶とおやつ、あとは……。編集後記「コーヒーとお茶と、わたしの時間」モノクロのジャケット写真もかっこいい「ELIS & TOM」。ジョビン個人の作品なら「Stone Flower」が好きです。演奏が極上なのはともかく、決して上手いとはいえない歌がだんだん癖になってきます。
モノクロのジャケット写真もかっこいい「ELIS & TOM」。ジョビン個人の作品なら「Stone Flower」が好きです。演奏が極上なのはともかく、決して上手いとはいえない歌がだんだん癖になってきます。

 暮らしのなかで、おいしい一杯とひと息つく時間。その様々なスタイルを特集する一冊ができました。道具にこだわり抜いてコーヒーを淹れる人や、野草と取り合わせて中国茶を自由自在に楽しむ人、畑に出向き自ら作った日本茶を味わう人、伝統菓子と紅茶を携えてピクニックに行く人……、いまや自宅でコーヒーやお茶を丁寧に淹れること自体は特別ではなくなりましたが、まだまだ楽しみ方の幅があると実感できる内容になっていると思います。

 さて僕はといえば、なかなかゆっくりお茶をする時間も取れない毎日ですが、この特集を作りながら改めて「ボサノヴァ」の魅力に取り憑かれました。何度も耳にしたはずの素朴なブラジリアンリズムは、今日においてもやはり素晴らしく、体も心もほぐれます。言わずもがな、コーヒー&ティータイムの定番ですよね。一杯をともにしたいアルバムを選ぶなら、名盤中の名盤、エリス・レジーナ&アントニオ・カルロス・ジョビンの「ELIS & TOM」を推します。

 ボサノヴァの巨匠ジョビンと、’70年代に最もブラジルで人気があったシンガーといわれるエリス。およそ50年前に、スターのふたりが童心にかえったように素直に歌い、奏でた楽曲の数々が収録された一枚です(実際、作品の印象に反して、その制作は険悪なムードからスタートして……、詳しくは映画『エリス&トム』で描かれています)。わりにシンプルなアレンジの作品が続き、たっぷり14曲堪能しても38分。いや、ジョビンにしてはそこまでシンプルでもないかもしれませんが、聴き心地としては音数が少なく、奇をてらっていません。スター同士の共演ですから各所にうっとりするポイントが満載でかつ、ただただ気持ちよく聴いて、ボーッとすることも許容してくれる。繰り返し聴いても飽きがきません。昨年リイシューされたので、レコードも手に入りますよ。

(担当編集/松崎彬人)
 

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