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短編映画の楽しみ方。編集後記「美しい、ということ」September 21, 2025

短編作品の楽しみ方。編集後記「美しい、ということ」
〈smbetsmb〉アートディレクター・新保美沙子さんに紹介してもらった「従兄ジュール」。1970年代、フランス・ブルゴーニュ地方の田舎で暮らす老夫婦の日常を、ドキュメンタリー的に追いかけた作品です。必要最低限の道具で、シンプルながらも豊かな暮らしを紡ぐ彼らを見ていると、モノに溢れた現代の生活について考えさせられます。

最新号は、「美しい、ということ」。「美意識を学ぶ、映画案内」という企画を担当し、映画三昧の取材期間を送りました。詳しくはぜひ本誌をチェックしてほしいのですが、映画好きのみなさんが教えてくれた作品はどれも面白くて、学びのあるものばかり。取材中に感想を語りあったり、答え合わせをしたりするのもとても楽しい時間でした。

とはいえ、今回の取材で一気に映画を浴びてお腹がいっぱいになったのか、近ごろ手が伸びるのは短編作品ばかり。映画館でじっくりと作品に浸る時間も素晴らしいですが、寝る前のベッドの中や通勤電車でサクッと楽しむのも気楽でいい。

ここ最近で1番好きだったのは、監督・脚本・主演をすべてバスター・キートンが担った『キートンの探偵学入門』(1924)です。短編映画の名作とは知りつつも、白黒だし、無音だし……と、なかなか手が出せずにいた本作。いざ観はじめると、あっという間の40分でした。走っている汽車の荷台を駆け抜けたり、遮断機に掴まって屋上から車に飛び乗ったり、バイクのハンドル部分に座ったままヒヤヒヤする場面を潜り抜けたり……。キートンが命懸けで撮ったはずのスタントシーンが、コメディ調で軽快に描かれているのが楽しい! 4か月の特訓の成果だという、上手すぎるビリヤードも見ものです。今から約100年前の人たちは、こんなにピュアな熱意をもって映画を作っていたんだな〜と愛おしさすら感じながら、最後まで気持ちよく完走できる作品でした。

今回の映画案内でも、1時間程度の観応えたっぷりの作品を多数紹介しています。肩の力を抜いて、楽しみながら「美しい」について学んでもらえるとうれしいです。
(編集H)

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