&Cooking 渡辺有子の料理教室ノート。

「薬味を上手に使って暑気払い」。渡辺有子の料理教室1年目6月September 07, 2024

料理家の渡辺有子さんが先生に、ライターの吉田直子さんが生徒に。本誌で連載中の「&Cooking 渡辺有子の料理教室ノート」がWebでも読めるようになりました。1年目6月のテーマは、「薬味を上手に使って暑気払い」。3つのレシピを紹介します。

渡辺有子の料理教室 暑さを感じるようになったら薬味の出番。ショウガやミョウガなど和の薬味だけでなく、ハーブも気軽に取り入れて。
暑さを感じるようになったら薬味の出番。ショウガやミョウガなど和の薬味だけでなく、ハーブも気軽に取り入れて。

薬味を上手に使って暑気払い。

先生:6月といっても盛夏のような日もあるので、この時期は自分で思っている以上に体力消耗するわよね。

生徒:私ではありませんが、「早くも夏バテで食が細くなった」なんて友人もいます。

先生:そんな直子さんのお友達のような方にお勧めなのが「薬味」です。ミョウガや青ジソ、ショウガのような和の薬味は、食欲が湧かないときに元気をくれますし、今回はミントも使っているので、薬味の世界がちょっとだけ広がるかも……。

生徒:和食でミント。レベルアップしそう。

先生:では「干物と薬味の梅ごはん」から作っていきましょう。お米は30分前にといでザルにあげておいてね。これをお鍋に入れて、水と酒、昆布、梅干しをのせて炊きますよ。

生徒:お鍋の中の景色が美しいなぁ〜。

先生:梅干しも一緒に炊くことで酸味がまろやかになるんです。これポイントよ(笑)。

生徒:わわわ、さっそくメモしなくちゃ。

先生:ミョウガは縦半分に切ってから斜め薄切り。青ジソも縦半分に切って、横にくるりと巻いて細切りにすると香りが立ちます。

生徒:これまでの人生において、適当に薬味を切り続けてきましたが、改めます!

先生:干物も焼いておきます。今日はカマスを使いますが、アジの干物でもおいしいです。焼けたら骨を取り除いて、軽くほぐします。

生徒:はーい!

先生:ここまで準備できたら、「豚の竜田揚げ スダチとミント」に移りますよ〜。豚肉は3等分の長さに切って、味醂と醤油をふってよく揉み込んでおきます。シシトウは竹串でポツポツ穴をあけておいてね。

生徒:この辺りは得意の作業になります!

先生:スダチ2個は果汁を搾って、1個は薄い輪切りにします。お肉を揚げるタイミングは、ごはんを蒸らし始めた頃がちょうどいいので、空いた時間でショウガを切ります。

生徒:「ショウガのお吸いもの」ですね。

先生:皮を薄くこそいで、繊維に沿って極細切りにします。いわゆる針ショウガ。この細さが味につながるので、丁寧にね。

生徒:シンプルなお料理だけに、こういうことが味を左右するんですね。がんばります。

先生:ここまできたらできたも同然よ。だしは前の晩に仕込んでおきます。水1ℓに昆布とイリコを入れて、冷蔵庫で一晩おくだけ。手間いらずでとてもおいしいだしが出るので、忙しい人にこそお勧めです。

生徒:先生、ごはんが炊き上がりました!

先生:昆布と梅干しの種を取り除いてくださいね。それから白煎り胡麻、干物、ミョウガと青ジソを加えてよく混ぜます。このごはんは干物と梅干しの塩気だけで味付けします。

生徒:ついに肉を揚げるときがきました!

先生:豚肉に片栗粉を薄くはたいて、1枚ずつ油に入れてカリッときつね色に揚げます。シシトウは素揚げにして、どちらもよく油をきってくださいね。器に盛り合わせたら、スダチ果汁と粗塩をまわしかけます。粗めに刻んだミントと紅たでをふったら完成です。

生徒:先ほどのだし、ひと煮立ちさせました。

先生:酒と塩、ショウガを加えて1分ほど火を入れたらお吸いものも完成です。ごはんは、お客様があるときなど、おひつや飯台に盛ると、おもてなし料理の風格が出ますよ。

生徒:さっそくおひつを買いに走らなきゃ!

1.干物と薬味の梅ごはん

渡辺有子の料理教室 干物と薬味の梅ごはん
すべての材料を混ぜるときは、しゃもじでごはんをさっくり切るようにする。
渡辺有子の料理教室 干物と薬味の梅ごはん
渡辺有子の料理教室 干物と薬味の梅ごはん
縦半分に切り、横に巻いてから細切り。これを覚えるとシソを切るのが楽しい。
渡辺有子の料理教室 干物と薬味の梅ごはん
すべての材料を混ぜるときは、しゃもじでごはんをさっくり切るようにする。
渡辺有子の料理教室 干物と薬味の梅ごはん
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    干物と薬味の梅ごはん
    〈材料〉作りやすい分量

    米…2合 
    水…360㎖ 
    酒…小さじ1 
    昆布…3㎝角 
    梅干し…大1個 
    干物(カマスなど)…1枚 
    ミョウガ…3個 
    青ジソ…6枚 
    白煎り胡麻…大さじ1 
    〈作り方〉
    1.米はといでザルに30分以上あげておく。

    2.鍋に1と水と酒、昆布、梅干しをのせて炊く。

    3.干物は網などで焼き、骨を取り除いてほぐす。

    4.ミョウガは縦半分に切り、斜め薄切りにする。青ジソは縦半分に切って横にくるりと巻いて細切りにする。

    5.炊きたての2の梅干しの種と昆布を取り除き、白煎り胡麻、3と4を加えて混ぜる。

2.豚の竜田揚げ スダチとミント

渡辺有子の料理教室 豚の竜田揚げ スダチとミント
片栗粉はまんべんなく、ごく薄くつけるのがコツ。1枚ずつ揚げると上手に。
渡辺有子の料理教室 豚の竜田揚げ スダチとミント
渡辺有子の料理教室 豚の竜田揚げ スダチとミント
片栗粉はまんべんなく、ごく薄くつけるのがコツ。1枚ずつ揚げると上手に。
渡辺有子の料理教室 豚の竜田揚げ スダチとミント
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    〈材料〉2〜3人分

    豚モモ肉(薄切り)…200〜250g 
    シシトウ…8本 
    スダチ…3個
    味醂…小さじ1 
    醤油…小さじ2 
    揚げ油…適量 
    片栗粉…適量 
    粗塩…適量
    ミント…5〜6g 
    紅たで…あれば2g
    〈作り方〉
    1.豚肉は3等分の長さに切り、味醂と醤油をふって揉み込んでおく。シシトウは竹串で穴をあける。

    2.スダチ2個は果汁を搾り、1個は薄い輪切りにする。

    3.フライパンに揚げ油を1〜2㎝高さに注ぎ、中温に熱する。豚肉に片栗粉を薄くはたき、1枚ずつ油に入れてカリッときつね色に揚げる。油をしっかりきる。

    4.シシトウは素揚げにして油をきる。

    5.器に3、4を盛り合わせ、スダチ果汁と粗塩をまわしかける。

    6.輪切りにしたスダチを散らし、粗めに刻んだミントと紅たでを合わせて全体にふる。

3.ショウガのお吸いもの

渡辺有子の料理教室 ショウガのお吸いもの
水だしは昆布とイリコで前日に仕込んでおく。澄んだ味わいのだしが取れる。
渡辺有子の料理教室 ショウガのお吸いもの
渡辺有子の料理教室 ショウガのお吸いもの
水だしは昆布とイリコで前日に仕込んでおく。澄んだ味わいのだしが取れる。
渡辺有子の料理教室 ショウガのお吸いもの
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    〈材料〉2人分

    昆布…3g 
    イリコ…8g 
    ショウガ…2かけ分 
    酒…小さじ1 
    塩…小さじ1/2強
    〈作り方〉
    1.水1ℓに昆布とイリコを入れ、冷蔵庫で一晩以上おく(このだしの600㎖を使う)。

    2.ショウガは皮を薄くこそぎ、極細切り

    3.器に2を盛り、1を果汁ごとのせる。

渡辺有子の料理教室 「薬味は足し算していくのが楽しいですが、紅たでは”あればで大丈夫”」と有子先生。おもてなしの際は大皿やおひつに盛って。
「薬味は足し算していくのが楽しいですが、紅たでは”あればで大丈夫”」と有子先生。おもてなしの際は大皿やおひつに盛って。
渡辺有子

渡辺有子先生

わたなべ・ゆうこ/東京都生まれ。料理家。スタジオ「FOOD FOR THOUGHT」にて、料理教室や食にまつわるイベントを開催。東京・代々木上原と西荻窪で、同名の器店をディレクション。作家ものの器や食まわりの商品を扱う。『料理と私』(晶文社)、『渡辺有子の家庭料理』(主婦と生活社)など著書多数。旬の素材を生かしたシンプルでおいしい料理に定評があり、いつまでも初心者気分でいつづける生徒・吉田直子にも、懇切丁寧に料理を教える。

吉田直子

吉田直子生徒

よしだ・なおこ/東京都生まれ。ライター。冠婚葬祭で使う小物とジュエリーのブランド〈シュオ〉のディレクター、ファッションブランドのプレスを務めるなど、フレキシブルに働く1 児の母。2019年、絵本『こっぷんとかっぷん』(絵・よこやまかんた/若芽舎)を刊行。2020年には蒼井優の著書『今日もかき氷【進化版】』(マガジンハウス)の編集を手がける。渡辺有子の料理教室で毎月記事をまとめているが、いまだに作るよりも食べることを好む。

photo : Wakana Baba text : Naoko Yoshida

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