&Cooking 渡辺有子の料理教室ノート。
「秋の走りのきれいな和食」。渡辺有子の料理教室2年目9月September 13, 2025
料理家の渡辺有子さんが先生に、ライターの吉田直子さんが生徒に。本誌で連載中の「&Cooking 渡辺有子の料理教室ノート」がWebでも読めるようになりました。2年目9月のテーマは、「秋の走りのきれいな和食」。3つのレシピを紹介します。

初秋ならではの前菜3種。
先生:いよいよ実りの秋。これからおいしい食材が店先にどんどん並び始めるわよ~。
生徒:初秋ならではの食材って、一体どんなものがあるのでしょう。
先生:今だったら、菊がドンピシャね。
生徒:父がおひたしにして食べていたなぁ。
先生:私もまさに、「カブと菊花のおひたし」を教えようと思っていたの。ぜひ、お父様に作って差し上げてちょうだい。
生徒:責任重大。真面目にがんばります。
先生:昆布を水に一晩浸けて、昆布水を作っておきます。ボウルかバットに昆布水と酢、塩を入れて合わせましょう。カブは皮をむいて薄切りにし、塩でなじませます。梨は皮をむいてから4等分のくし形切りに、横半分に切ってから縦5㎜幅に切りましょう。菊花は花びらを摘み、沸いたお湯の中に酢を入れる。お湯に花びらをくぐらせて取り出し、冷水にとってからひとまとめにし、両手で挟むようにして水気を絞ってほぐします。
生徒:菊の下準備、初めて見ました。
先生:一度にここまでやっておいて、残りは冷凍しておくといいの。ホウレンソウのおひたしや焼き魚に添えてね。昆布水にカブ、梨、菊花を浸して、冷やしておきましょう。
生徒:次は本日のメイン料理、「豚肉と干し椎茸の春巻き」です。
先生:まずは乾物を戻すことから始めます。干し椎茸はぬるま湯、キクラゲは熱湯に20分ほど浸しておきます。水気をしっかりきって、軸を取り除く。豚バラ肉、干し椎茸、キクラゲ、筍は細切りにしておきます。
生徒:私の中の子どもの心が「春巻き食べたい!」と叫んでいます〜。
先生:老若男女に愛されるメニューだものね。さて、フライパンに胡麻油を熱して、豚バラ肉を加えて炒めましょう。次に干し椎茸、キクラゲ、筍も加えてさらに炒めます。甜麺醤、きび砂糖、醤油、酒、塩で味を調えたら、倍量の水で溶いた片栗粉を加えてとろみをつけます。炒めた具はバットなどに広げて冷ましておきますよ。
生徒:皮に入れる量がなかなか難しくて。
先生:作った具を10分の1量ずつに分けてください。それが春巻き1つ分の具です。そんなに多くないでしょう? 先に分けておくと失敗が少ないわよ。最初に手前を、次に左右を折りたたんで、水で封を閉じます。フライパンに揚げ油を中温に熱し、色よく揚げて、油をしっかりきりましょう。
生徒:油ぎりは立てて!ですよね。
先生:直子さん、その通り。最後は「落花生とジャコのごはん」です。米をといだら、ザルにあげて水気をきります。続いて、鍋に、米、水、酒、昆布を入れて浸水させます。
生徒:水気をしっかりきることで、米が水やだしを吸ってくれるんですよね。
先生:直子さん、よく覚えてる。さあ、落花生は薄皮をむきます。フライパンにちりめんジャコを入れて弱火で炒り、香りがしてきたら醤油をまわし入れて混ぜます。米の中に塩を加えて全体をさっと混ぜてから、落花生とちりめんジャコをのせる。フタをして中火強にかけ、沸いてきたら弱火にして14分、火を止めて10分蒸らします。炊き上がったら、全体をさっくりと混ぜて、茶碗に盛り、カボスの皮を削って完成です。
生徒:私の中の大人の心が大興奮してます〜。
1.カブと菊花のおひたし
〈材料〉2人分
カブ…2個
菊花…1/2パック
梨…1/2個
酢…大さじ2
塩…小さじ1(2/3+1/3)
昆布…3㎝角1枚 水…150㎖
-
〈作り方〉
1.昆布を分量の水に一晩浸けて、冷蔵庫で昆布水を作る。ボウルもしくはバットに昆布水と酢、塩(小さじ2/3)を入れて、合わせておく。
2.カブは皮をむいて薄切りにし、残りの塩(小さじ1/3)でなじませる。梨は皮をむいてから4等分のくし形切りにし、横半分に切ってから縦5㎜幅に切る。
3.菊花は花びらを摘み、鍋にお湯2ℓを沸かし、酢60㎖(分量外)を入れて、菊の花びらをさっとくぐらせて取り出し、冷水にとって水気をしっかり絞り、ほぐす。
4.1にカブ、梨、菊花を入れて、1時間以上冷蔵庫で浸す。
2.豚肉と干し椎茸の春巻き
〈材料〉小さめ10本分
豚バラ肉(薄切り)…150g
干し椎茸…3枚
春巻きの皮…10枚
キクラゲ(乾燥)…5g
筍…100g
甜麺醤…大さじ1
きび砂糖…小さじ1
醤油…小さじ2
酒…大さじ2
塩…小さじ1/4
胡麻油…大さじ1
片栗粉…大さじ1
揚げ油…適量
-
〈作り方〉
1.干し椎茸はぬるま湯で戻す。キクラゲは熱湯に20分ほど浸して戻しておく。水気をしっかりきり、それぞれ軸は取り除いておく。豚バラ肉、干し椎茸、キクラゲ、筍はそれぞれ細切りにする。
2.フライパンに胡麻油を熱し、豚バラ肉を加えてざっと炒め、干し椎茸、キクラゲ、筍も加えてさらによく炒め、甜麺醤、きび砂糖、醤油、酒、塩で味を調える。倍量の水で溶いた片栗粉を加えてとろみをつけ、炒める。バットなどに広げて冷ます。
3.春巻きの皮に2を1/10量ずつのせて巻き、水を塗ってとめる。
4.フライパンに揚げ油を中温に熱し、色よく揚げ、油をしっかりきる。
3.落花生とジャコのごはん
〈材料〉作りやすい分量
煎り落花生…60g
ちりめんジャコ…25g
米…2合
醤油…小さじ1
水…360㎖
昆布…3㎝角1枚
酒…大さじ1
塩…小さじ1/2
カボス…適量
-
〈作り方〉
1.米をとぎ、ザルにあげて水気をきる。鍋に、米、水、酒、昆布を入れて浸水させておく。落花生は薄皮をむく。
2.フライパンにちりめんジャコを入れて弱火で炒り、香りがしてきたら醤油をまわし入れて混ぜる。
3.米の鍋に塩を加えて全体をさっと混ぜてから、落花生とちりめんジャコをのせる。フタをして中火強にかけ、沸いてきたら弱火にして14分、火を止めて10分蒸らす。
4.炊き上がったら、全体をさっくりと混ぜる。茶碗に盛り、カボスの皮を削る。


渡辺有子先生
わたなべ・ゆうこ/東京都生まれ。料理家。スタジオ「FOOD FOR THOUGHT」にて、料理教室や食にまつわるイベントを開催。東京・代々木上原と西荻窪で、同名の器店をディレクション。作家ものの器や食まわりの商品を扱う。『料理と私』(晶文社)、『渡辺有子の家庭料理』(主婦と生活社)など著書多数。旬の素材を生かしたシンプルでおいしい料理に定評があり、いつまでも初心者気分でいつづける生徒・吉田直子にも、懇切丁寧に料理を教える。

吉田直子生徒
よしだ・なおこ/東京都生まれ。ライター。冠婚葬祭で使う小物とジュエリーのブランド〈シュオ〉のディレクター、ファッションブランドのプレスを務めるなど、フレキシブルに働く1 児の母。2019年、絵本『こっぷんとかっぷん』(絵・よこやまかんた/若芽舎)を刊行。2020年には蒼井優の著書『今日もかき氷【進化版】』(マガジンハウス)の編集を手がける。渡辺有子の料理教室で毎月記事をまとめているが、いまだに作るよりも食べることを好む。
photo : Wakana Baba text : Naoko Yoshida