&Cooking 渡辺有子の料理教室ノート。
「初秋ならではの前菜3種」。渡辺有子の料理教室2年目8月August 09, 2025
料理家の渡辺有子さんが先生に、ライターの吉田直子さんが生徒に。本誌で連載中の「&Cooking 渡辺有子の料理教室ノート」がWebでも読めるようになりました。2年目8月のテーマは、「初秋ならではの前菜3種」。3つのレシピを紹介します。

初秋ならではの前菜3種。
先生:初秋といっても暑いわね。季節の変わり目、直子さんは何を食べたい?
生徒:正直なところ、胃腸もバテ気味ですし、ガツンと重たいメインより、前菜をあれこれ並べて延々とつまんでいたいです。
先生:バテたと言いつつ食への欲を感じるわ。
生徒:わはは。
先生:今日の教室は直子さんのような気分の方に向けて、前菜を3種教えたいと思います。
生徒:ありがたや~。
先生:さて、「蒸しナスのライム香味ダレ」から始めましょう。ナスには竹串でポツポツと全体的に穴をあけておきます。蒸気の上がった蒸し器や蒸籠で蒸しますよ。取り出すときに火傷しないよう布を敷くといいの。
生徒:普段は生姜醤油で食べちゃうところを。
先生:生姜は、今日はみじん切りにします。ボウルに入れて、ライム果汁、きび砂糖、醤油、塩、胡麻油を加えて、よく混ぜ合わせましょう。ナスが蒸し上がったら水分をペーパーで拭き取って、まずは皮を下から上に向かってむきます。そして、ヘタから下に向かって竹串で縦に6~8等分に裂きます。こうすることで味を染みやすくさせるんです。
生徒:ふむふむ。
先生:裂けたらバットに並べて、タレをかけてなじませます。タレごと器に盛って、香菜の葉をのせたら完成です。
生徒:これなら弱っていても食べられちゃう。
先生:うふふ。つづいては「秋のポテトフライ」にいきますか。くりちゃーん、あれ出してちょうだい~(アシスタントのくりちゃんが、冷蔵庫からカット済みのジャガイモが入った袋を運んでくる)。
生徒:こ、これは!?
先生:ポテトフライをあなどるなかれ。一晩冷やしておいたこの状態のジャガイモに、おいしさの秘密が隠されているのよ。
生徒:わわわ。早く教えてくださいっ。
先生:まず、ジャガイモを縦に12等分に切って水にさらしておきます。その後、15分ほど蒸すか、硬めに茹でてから水気をきって、粗熱が取れたら冷蔵庫に入れて一晩。こうして一度組織を壊すことで、ホクッとした食感のポテトフライに仕上がるのよ。
生徒:確かに、切ったジャガイモを生のまま揚げても、お店で食べるようなポテトフライにはならないですもんね。
先生:ジャガイモの水気をペーパーで拭いてから低温の油に入れて、中火で5分ほど揚げます。何度か菜箸でジャガイモを片方に寄せて、油の外に出し、空気に触れさせながら揚げていくの。こうすることで油がジャガイモの中までしっかり入っていくんです。
生徒:メモメモ。
先生:色よく揚がったら、一度バットに取り出して、油を高温に熱して二度揚げしてください。油をしっかりきってからお皿に盛り、ミモレットチーズをたっぷり削って粗塩を軽くふり、黒胡椒を挽きましょう。
生徒:実は手間がかかっているんですね。
先生:そうなのよ~。さあ、最後は簡単でおいしい「イチジクの練り味噌のせ」よ。小鍋に白味噌と卵黄を入れて、弱火で、つやが出るまで木ベラでよく練ります。イチジクは皮を薄くむいて半分に切り、練り味噌を適量のせて、実山椒を挽いたらもう出来上がり。
生徒:前菜をあなどるなかれ~!
1.蒸しナスのライム香味ダレ
〈材料〉2人分
ナス…4本
香菜の葉…1茎分
ライム果汁…1個分
生姜…20g
きび砂糖…小さじ1
醤油…小さじ2
塩…小さじ1/2
胡麻油…小さじ2
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〈作り方〉
1.ナスは竹串で数か所穴をあけ、蒸気の上がった蒸し器に入れ、10~12分蒸す。
2.生姜はみじん切りにする。ボウルに入れライム果汁、きび砂糖、醤油、塩、胡麻油を加え、よく混ぜ合わせる。
3.蒸し上がったナスの水分をペーパーで拭き、皮を下から上に向かってむき、ヘタから下に向かって竹串で縦に6~8等分に裂く。
4.バットに並べ、2のタレをかけてなじませる。器に盛り、香菜の葉をのせる。
※ナスのヘタを切り落とし、食べやすい大きさに裂いて、タレを和えてもよい。
2.秋のポテトフライ
〈材料〉2人分
ジャガイモ(シンシア)…3個
ミモレットチーズ…適量
粗塩、黒胡椒…各適量
揚げ油…適量
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〈作り方〉
1.ジャガイモは縦に12等分に切り、水にさらす。15分ほど蒸すか、硬めに茹でて水気をきり、バットなどに広げて粗熱を取り、冷蔵庫で一晩冷やす。
2.低温の油に1をペーパーで水気を拭きながら入れ、5分ほど中火で揚げる。途中、菜箸などでジャガイモを片方に寄せて、油から出るようにし、空気に触れさせて揚げていく。こうすることで油がジャガイモの中までしっかり入っていく。色よく揚がったら、一度バットに取り出す。
3.油を高温に熱し、カラリと二度揚げする。油をしっかりきる。
4.皿に盛り、ミモレットチーズをたっぷり削り、粗塩を軽くふり、黒胡椒を挽く。
3.イチジクの練り味噌のせ
〈材料〉作りやすい分量
イチジク…4個
白味噌…100g
卵黄…1個
実山椒(乾燥)…適量
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〈作り方〉
1.小鍋に白味噌、卵黄を入れて弱火で、つやが出るまで木ベラでよく練る。
2.イチジクは皮を薄くむいて半分に切る。1を適量のせて、実山椒を挽く。
※練り味噌は多めに出来上がるので、冷蔵庫で保存し、焼いた厚揚げにのせるなどして活用してください(早めに使い切ること)。


渡辺有子先生
わたなべ・ゆうこ/東京都生まれ。料理家。スタジオ「FOOD FOR THOUGHT」にて、料理教室や食にまつわるイベントを開催。東京・代々木上原と西荻窪で、同名の器店をディレクション。作家ものの器や食まわりの商品を扱う。『料理と私』(晶文社)、『渡辺有子の家庭料理』(主婦と生活社)など著書多数。旬の素材を生かしたシンプルでおいしい料理に定評があり、いつまでも初心者気分でいつづける生徒・吉田直子にも、懇切丁寧に料理を教える。

吉田直子生徒
よしだ・なおこ/東京都生まれ。ライター。冠婚葬祭で使う小物とジュエリーのブランド〈シュオ〉のディレクター、ファッションブランドのプレスを務めるなど、フレキシブルに働く1 児の母。2019年、絵本『こっぷんとかっぷん』(絵・よこやまかんた/若芽舎)を刊行。2020年には蒼井優の著書『今日もかき氷【進化版】』(マガジンハウス)の編集を手がける。渡辺有子の料理教室で毎月記事をまとめているが、いまだに作るよりも食べることを好む。
photo : Wakana Baba text : Naoko Yoshida