BOOK 本と言葉。
目利きの店主が営む台湾の書店で、心躍る一冊と出合う。July 20, 2025
伝統と新しい文化が交差する街・台北は、訪れるたびに新たな発見がある場所。賑やかな朝の風景、地元の人々が通う食堂、日用品や台湾茶の店、個性的な本屋……。現地に暮らすガイドが案内してくれた、11のテーマに沿った“ふだんの台北”の巡り方。
&Premium136号(2022年4月号)「台湾でしたいこと」より、編集者で、読書推進活動家でもある李惠貞さんが教えてくれた台北の独立系書店3軒を特別にwebサイトでも紹介します。

童里繪本洋行 トンリーホェイベンヤンハン 古亭
「絵でストーリーを物語る」をキーワードに、店主の林さんがフランスを中心に国内外から仕入れる絵本は、重ね切り絵や箔押しなど、デザインや装丁にこだわったものが多い。店内ではイラスト関連の作品販売も行う。「素敵なイラストレーターやアーティストの作品に出合える場所。ここで知ったフランスの作家、レベッカ・ドートゥルメールさんの絵本は全作品持っています」と李惠貞さん。
▷台北市大安區潮州街15號1F ☎02−2391−8676 12:00~18:00 月休
郭怡美書店 クオイーメイシューディエン 大橋頭
かつて食品の貿易で栄えた郭家が1922年に建てた町家を改装し、2022年に3代目が書店としてオープン。約3万冊の蔵書を取り扱い、店内の本を自由に読める読書スペースも点在。売り上げの10%は小中学生の読書習慣を広げる活動に充てている。「歴史的な建築の中で読書に没頭できます。3階の詩集が並ぶ部屋がお気に入り」
▷台北市大同區迪化街一段129號 ☎02−2550−8291 12:00~20:00 土日11:00~22:00 無休 1階に店内の本が読めるカフェを併設。
boven雜誌圖書館 ボーベンザーズートゥーシューグワン 忠考復興
「雑誌の魅力を届けたい」と店主のスペンサーさんが、5年かけて世界中から約1万冊を収集し、2015年に雑誌の図書館を開いた。今では6万冊以上に増えたアーカイブをじっくり楽しめる。新刊、古本の販売コーナーも併設。「オーストラリア発のフードカルチャー誌『LUNCH LADY』など、インスピレーションの湧く本ばかり」
▷台北市大安區復興南路一段107巷5弄18號 ☎02−2778−7526 10:00~21:00 無休 入館料は300元。カフェ12:00~18:00 月火休
個性豊かな選書が楽しい空間で、思い出に残る読書体験を。
「自分にとって書店とは、本を買うだけではなく、ふだん出合わないものと出合える空間。旅先でも街の本屋にふらっと立ち寄ってみると、必ず新しい発見があります」
そう話すのは、編集者で、読書推進活動家でもある李惠貞さん。自身も日本全国の66もの書店を1か月で回ったことがあるほど本屋を愛する彼女が、台北に来たらぜひ訪れてほしいと話す場所のひとつが、台湾で唯一絵本を専門に取り扱う『童里繪本洋行』。
「店主が世界中からセレクトする絵本は子どもだけでなく、大人も楽しめるものばかり。工夫が詰まったしかけ絵の本や繊細に書き込まれたイラストなど、家に置いておきたくなるような作品が集まっています」
『郭怡美書店』は選書のジャンルが豊富。
「独立系書店として台北有数の蔵書数。世界の本が並ぶ2階には、日本書籍の翻訳版を特集したコーナーもあり、表紙のデザインが異なる台湾版を見るのも楽しいと思いますよ」
そして、台湾のブックカルチャーに欠かせない場所が『boven雜誌圖書館』だという。
「国内外の雑誌文化に気軽にアクセスできる貴重な空間です。近年、台湾各地で若者がローカルな情報を発信する雑誌が増えているのですが、高雄の『megao』や嘉義の『+1+1+1』などもここでは取り揃えています」

李 惠貞リ・ホェイツェン編集者
出版社に長年勤め、2011年から'17年まで、デザイン・カルチャー専門雑誌『Shopping Design』の編集長を務めた。多数の書籍編集も手がけるほか、読書を広める活動「獨角獸計畫」を主宰し、書店やコンサートホールでの読書イベント、読書コーナー「a reader」の選書なども行う。
photo : Yoshiko Watanabe coordination : Yaeko Kondo