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手仕事にさらに手を加え、魅力を伝える。東京・初台『tay』。新しい暮らしが見つかる店。May 17, 2025

2025年6月号の「新しい暮らしに出合える、店ともの。」は、まだ見ぬアイテムや、新鮮な暮らしのスタイルに出合える13軒が登場。ここでは、東京・初台『tay』をWEBで特別に公開します。

手仕事にさらに手を加え、魅力を伝える。東京・初台『tay』
タイの山岳民族であるカレン族が一つひとつ手作りしたシルバーアクセサリー。92.5~99.9%の高純度で作られるカレンシルバーは、モダンで洗練されたデザイン。

東南アジアのストリートから生み出された民芸品や工芸品、自然豊かな土地で暮らす山岳民族の人たちの手で作られたジュエリーや古布——。大量生産・大量消費のものと対極にある、人々の生活に長く根付いてきた品々の、暮らしの息づかいを感じさせる佇まい。そこには、連綿とした濃密な時間が閉じ込められ、歴史の重みが滲み出ている。オーナーの坂野高広さんは8年前にベトナムを旅したとき、手仕事のものにしかない特有の魅力にたちまち引き込まれた。

「ベトナム南部の人が使っていたソンベ焼に夢中になりました。職人一人ひとりの手癖を感じる、美しく個性のある絵付けが気になって調べたら、ベトナム戦争が終わるくらいまで作られていた庶民の器だと知って。自分はレコードを探すのが好きなのですが、”レアグルーヴのレコード”を追い求める感覚で器を探す旅にのめりこみました」

手仕事にさらに手を加え、魅力を伝える。東京・初台『tay』
スタッフの落合美紀さんが着ているブラウスは、山岳民族のミャオ族の衣装を新たなパターンで再構築。自分たちで黒染めした。
手仕事にさらに手を加え、魅力を伝える。東京・初台『tay』
1970年代のベトナム配給時代に北部で作られていた器。素朴な絵付けが味わい深い。

やがて「魅力を伝えたい」と確信したのが、東南アジアの山岳民族による手仕事のものだった。

「師匠的な存在に山岳民族のクラフトコレクターがいて、現地の方を紹介してもらいました。作り手を訪ね、会話を重ねて、品物を譲ってもらえるようになって。たとえば、カレン、アカ、モン族などのシルバージュエリー。デザインのモチーフは彼ら、彼女らが日常生活で想いを巡らす対象が選ばれていて、グルグルと円が描かれたものは、輪廻転生や太陽を意味します。伝統として継承されてきたデザインを知ることも興味深いです」

手仕事にさらに手を加え、魅力を伝える。東京・初台『tay』
1920〜50年代にベトナム・ビエンホアで作られた花器と象の置物。現地の美術学校で働くフランス人夫妻が、フランスのアート性とベトナムの職人の技術を融合した。

心を動かされたものの魅力を自分たちの言葉で語り、届ける。それだけでなく、さらなる手仕事を加えることをスタンスとして大切にしている。

手仕事にさらに手を加え、魅力を伝える。東京・初台『tay』
陳列された赤絵皿は、ベトナム北部にあるバッチャン村で40〜50年ほど前に作られたバッチャン焼。
手仕事にさらに手を加え、魅力を伝える。東京・初台『tay』
店内ではベトナム陶器の関連書籍も自由に閲覧できる。買い物しながら歴史やものづくりの背景を学べる。
手仕事にさらに手を加え、魅力を伝える。東京・初台『tay』
ベトナムのモン族のヴィンテージの刺繍布を使用して作った巾着袋。
手仕事にさらに手を加え、魅力を伝える。東京・初台『tay』
手仕事について情熱的に語るオーナーの坂野さん。

「ブラウスやベストなどの衣装は、自分たちの手で染めたり、パターンをモディファイしたり、現代のファッションや暮らしに馴染む仕様を加えてさらなる魅力を引き出したい。そうして、ものとしてさらに体温があるものにしたいんです」

tay

東京都渋谷区初台1−39−14 ☎03−6455−1589 11:00〜19:00 月~水休 東京・学芸大学駅に姉妹店『333』がある。

tay

photo : Mitsugu Uehara edit & text : Seika Yajima

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