INTERIOR 部屋を整えて、心地よく住まうために。
手仕事にさらに手を加え、魅力を伝える。東京・初台『tay』。新しい暮らしが見つかる店。May 17, 2025
2025年6月号の「新しい暮らしに出合える、店ともの。」は、まだ見ぬアイテムや、新鮮な暮らしのスタイルに出合える13軒が登場。ここでは、東京・初台『tay』をWEBで特別に公開します。

東南アジアのストリートから生み出された民芸品や工芸品、自然豊かな土地で暮らす山岳民族の人たちの手で作られたジュエリーや古布——。大量生産・大量消費のものと対極にある、人々の生活に長く根付いてきた品々の、暮らしの息づかいを感じさせる佇まい。そこには、連綿とした濃密な時間が閉じ込められ、歴史の重みが滲み出ている。オーナーの坂野高広さんは8年前にベトナムを旅したとき、手仕事のものにしかない特有の魅力にたちまち引き込まれた。
「ベトナム南部の人が使っていたソンベ焼に夢中になりました。職人一人ひとりの手癖を感じる、美しく個性のある絵付けが気になって調べたら、ベトナム戦争が終わるくらいまで作られていた庶民の器だと知って。自分はレコードを探すのが好きなのですが、”レアグルーヴのレコード”を追い求める感覚で器を探す旅にのめりこみました」
やがて「魅力を伝えたい」と確信したのが、東南アジアの山岳民族による手仕事のものだった。
「師匠的な存在に山岳民族のクラフトコレクターがいて、現地の方を紹介してもらいました。作り手を訪ね、会話を重ねて、品物を譲ってもらえるようになって。たとえば、カレン、アカ、モン族などのシルバージュエリー。デザインのモチーフは彼ら、彼女らが日常生活で想いを巡らす対象が選ばれていて、グルグルと円が描かれたものは、輪廻転生や太陽を意味します。伝統として継承されてきたデザインを知ることも興味深いです」

心を動かされたものの魅力を自分たちの言葉で語り、届ける。それだけでなく、さらなる手仕事を加えることをスタンスとして大切にしている。
「ブラウスやベストなどの衣装は、自分たちの手で染めたり、パターンをモディファイしたり、現代のファッションや暮らしに馴染む仕様を加えてさらなる魅力を引き出したい。そうして、ものとしてさらに体温があるものにしたいんです」
東京都渋谷区初台1−39−14 ☎03−6455−1589 11:00〜19:00 月~水休 東京・学芸大学駅に姉妹店『333』がある。

photo : Mitsugu Uehara edit & text : Seika Yajima