EVENT いま訪れたい場所、見たいもの。
写真家・水谷太郎さんの個展「淼/びょう」が『隙間』にて開催。April 04, 2023
一瞬でなくなる世界、景色、境界。意志と偶然の狭間に写真の儚い夢を見る。
2023年4月8日(土)〜16日(日)、〈エンダースキーマ〉のオルタナティブスペース『隙間』(東京・蔵前)にて、写真家・水谷太郎さんの個展「淼/びょう」が開催される。
ファッションをはじめ、様々な分野でコミッションワークを手がけながら、自身の作品も発表し続けてきた水谷さん。本展では、2022年の冬にドイツ・ベルリンで撮影した新作を発表する。
「一瞬でなくなる世界、景色、境界。意志と偶然の狭間に写真の儚い夢を見る。」とは、ステートメントに掲げられた言葉。
印象派の絵画のようにも見える水面のモチーフは、写真家の目、すなわちレンズが捉えた運河に映る波の反射を、サイケデリックなイメージとしてすくい上げたもの。さらに、画面の反転という最小限の操作を加えることにより、具象と抽象、意識と無意識、現実と虚構の間を提示している。
メディア=媒介としての写真は、ある具体的な対象を写すとともに、それではないなにか/どこかへの変換可能性を孕む。水谷さんは今回の展示で、曖昧で不定形な画面を通して、写真が持つイメージの二相性を差し出そうとしているのかもしれない。
「物々交換」を経て生まれる、新たな価値。
会場となる『隙間』は〈エンダースキーマ〉が2022年6月に開いたオルタナティブスペース。アーティストの展示を軸に、ブランドの考える新しい価値を実地調査する拠点として期間限定で営まれている。
ユニークなのは「物々交換」というコンセプトだ。『隙間』とエキシビターの間で、それぞれが持っている価値を、貨幣を介すことなく交換しているという。具体的には、ギャラリースペースおよび運営と、エキシビターの展示作品1点を交換する。また、アーティスト、鑑賞者、それを伝える人々、あるいは彼ら自身がこの場を介して結びつき、それぞれの思考を交換することも「価値」と捉えているということだった。たしかにそこには、新たな価値観や豊かさが育まれる可能性があるのではないだろうか。
かつて問屋街として栄えた蔵前エリアにあり、新店が集う清々しい空気に触れられるのも、魅力のひとつ。ぜひこの機会に、出かけてみては。
EVENT INFORMATION
水谷太郎「淼/びょう」
会場 : 隙間
住所 : 東京都台東区蔵前3-11-2 1F
会期 : 2023年4月8日(土)〜16日(日)
営業時間 : 12:00〜19:00
text : Yu Miyakoshi