FASHION 自分の好きを身に付ける。
尊重し合うものづくりから生まれる、〈LOEFF〉の機能美を備えた日常着。Shape of Style to Come 02 / January 25, 2021
機能的、肌触りがいい、耐久性がある、美しい……。『アンドプレミアム』が服選び、もの選びの際に大切にしてきた“つくりのいいもの”という考え方。そして今、未来を考えたものづくりには、技術の継承、パートナーシップ、自然への感謝、サステナビリティ……という、対象を思いやる視点が欠かせません。そうしたものづくりを行うブランドの中から、〈LOEFF〉のつくりのいいものが生まれる現場を訪ねました。
Shape of Style to Come 02 : LOEFF
作り手同士の信頼関係と使い手の「思い」を大切にする。
「精悍」「品」「質」「真摯」をポリシーにしたものづくり。〈ロエフ〉のコンセプトには、端的な表現で服作りに対する愛が込められている。それぞれの服が生まれた歴史背景と物語、形にしてきた先人たちへのリスペクト、それらを大切にしながら創意工夫をしていくこと--。
セレクトショップ〈ユナイテッドアローズ〉のデザイナーとして14年、これまで自社で扱うブランドやオリジナルデザインを手がけてきた鈴木里香さんは、2019年の秋冬から自身のブ ランドとして〈ロエフ〉をローンチした。目指すのは「年齢を重ねても大切にしたい日常着」。日々のちょっとしたことを楽しく過ごせるようなデイリーウェアを作っていきたいという思い から、個性的なデザインやファッション性を強く打ち出すよりも「〝普通〞をきちんとやりたいというところからはじまりました」。鈴木さんが服作りで何よりも大切にしていることは人とのつながりだ。
「素材やデザインへのこだわりはもちろん大切なことですが、長年作りながら思っていたのは、自分が作りたい服は一人ではできないということ。生地屋、工場、職人、一緒に働くスタッフの関わりが欠かせません。共に携わってくれる以上、彼らにとって楽しい仕事であってほしいし、やりがいのある仕事だと思ってもらいたい」
さまざまな工場や職人との付き合いがある鈴木さんだが、縫製技術の高さに格別に信頼を寄せるのが、秋田県にある秋田ファイブワン工業だ。縫製は 服作りの最終工程。そのポリシーややり方は、「工場の顔」となって、商品に表れるという。秋田ファイブワン工業は、鈴木さんが理想とする、女性服だけどメンズのような、マスキュリンなスタイルに仕上げてくれる。初めは 服の上がりが好きという理由だったが、実際に足を運び、その整った職場環境やスタッフの技術の高さを目にしてさらに信頼が高まった。
袖を通したときに『誰かに会いたい』と思える服を。
秋田運河の畔にある秋田ファイブワン工業は、1973年に大阪の紳士服製造会社の秋田工場として創業。その2年後には会社として独立し、現会長の佐賀善美さんが運営し、現在に至る。技術力の高さは業界でも折り紙付きで大手アパレルから有名なデザイナーズブランドまで幅広い取引がある。「こだわりのある人と仕事をしたい」というのが信条の佐賀さんは、自ら契約を取り付け、これまで100社以上と取引してきた。佐賀さんが目指す工場は、人間性を重視した「ヒューマンファクトリー」であり、スタッフが快適に毎日働きやすい環境を整えることを最優先する。大量生産を前提としていないので、一人でいくつもの工程をこなす「多能工」も多い。多品種、小ロット生産に対応し、特殊生地なの難度の高い要望にも応える。鈴木さんのような個人ブランドのいわば「小ロット」でもフレキシブルに対応するが、佐賀さんいわく「もちろん工賃や納期もありますので、すべては受けていません。内容次第ですね。鈴木さんからの提案は、我々もチャレンジしたくなるものでしたから。小規模だとしてもスタッフがやってみたいという思いを抱けるか、それはデザイナーの熱意によるところが大きいです」。
同じ方向を向いて、尊重し合えるものづくりができるか、それが両者共通の思いでもある。さらに、鈴木さんが、作り手同士のパートナーシップ同様に意識しているのが、使い手側の「思い」だ。例えば、パンツがきれいに見えるように施されたデザインや工夫に対して「きれいに決まるな」「なんとなく落ち着くな」と感じてもらえることが励みとなる。身に着ける側にはアイテムのディテールをこと細かに説明しなくていい。気持ちひとつで、もっと感覚的でいいという。
「袖を通したときに『誰かに会いたい』と思える服か。気分が上がるとか、気持ちいいと思っていただけたら、作り手にとってはそれが何よりの喜びですし、〝つくりがいい〞ってそういうことではないかと思うんです」
LOEFF ロエフ
問い合わせ先
ロエフ六本木
TEL:03‒5786‒0877
photo : Norio Kidera edit & text : Chizuru Atsuta
※『&Premium』No. 83 2020年5月号「これからの、つくりのいいもの」より