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麻生要一郎さんが暮らす築50年の住宅。必要最低限しか置かないミニマルライフについて。February 13, 2025

古い家には人を惹きつける不思議な味わいがあります。その“古さ”を楽しみつつ、自分たちの暮らしに合う部屋に整えたい。DIYで築70年超えの古民家を甦らせたり、築50年の集合住宅をすっきり改築するなど、温故知新を実践した4組の住まいを最新号「部屋と心を、整える」より特別に公開します。

過去をいったん整理して、心機一転フルリノベーション。

文筆家・料理人 麻生要一郎さんの必要最低限しか置かないミニマルライフ。
麻生要一郎さんの住まいは築50年のマンションの最上階。フルリノベーションをした際に眺望と日当たりを確保するため、リビングの壁一面に大きな窓を取り付けた。

 執筆や料理の仕事を生業とする麻生要一郎さんの住まいは、都心にある築50年の集合住宅。現在はこの建物のオーナーでもあり、最上階の部屋をフルリノベーションして暮らしている。自身が階下に住んでいた十数年ほど前、当時のオーナーだった老姉妹の養子になった麻生さん。やがて二人が住んでいた部屋を継ぐ形になるが、当初はここで生活することは想像できなかったという。

 「とにかくたくさんの“もの”を持っていた姉妹だったので、部屋には隙間もないくらい。途方もない量で全然片付かなかったし、長い介護生活もあって気分的にもここでの暮らしのイメージが湧かなかったんです」

 修繕して住むと決めたのは、友人で内装デザインを手がける〈Saab〉の笹谷崇人さんのアドバイスから。作り付けの家具や壁紙の一部を剥がして、これまでとは違った空間になると見せてくれた。

 「全く違う景色を目にして初めて、この部屋に染み付いた思い出も一緒に剥がせば、新たな気持ちで暮らせるかもしれないと思えたんです」

文筆家・料理人 麻生要一郎さんの必要最低限しか置かないミニマルライフ。
キッチンから寝室に繋がる廊下。左側には服や日用品をしまうストレージがある。愛猫チョビは日当たりの良い場所を見つけては昼寝するのがお気に入り。
文筆家・料理人 麻生要一郎さんの必要最低限しか置かないミニマルライフ。
たくさんの器を持っている麻生さんだが、ここでは毎日使うものだけに絞って、それ以外は1階のアトリエに置くことに。有永浩太のグラスや『ライトイヤーズ』で購入したカップが並ぶ。
文筆家・料理人 麻生要一郎さんの必要最低限しか置かないミニマルライフ。
キッチンの壁は一部コンクリート剥き出しにしてリースを飾る。
文筆家・料理人 麻生要一郎さんの必要最低限しか置かないミニマルライフ。
玄関を背に右手の廊下の先にはトイレがある構造。

 それからは一気にスピードアップして残っていたものを処分し、2023年11月に解体、翌年9月には竣工と、とんとん拍子に進んだ。家のつくりは笹谷さんと話しながら進め、中心にある玄関から左右に廊下を作り、リビング、ダイニング、キッチン、寝室と回遊できるように。家具は〈カリモクニュースタンダード〉や〈アルテック〉などシンプルかつ新しいものだけで統一した。

 「以前はヴィンテージや古いものも交ぜて使っていたけれど、思い切ってやめました。最近は執筆の仕事が増えたので、少しでもノイズが少ない空間が欲しくて、すっきりした部屋で集中したいと思っているので」

文筆家・料理人 麻生要一郎さんの必要最低限しか置かないミニマルライフ。
寝室の壁一面には本棚を取り付けた。料理にまつわる本や母親の写真など大切にしているものを並べて。部屋の3分の1の床は畳に。ごろんとできて快適。

 麻生さんは1階にも大きなキッチンのあるアトリエを構えているが、ここには料理まわりの道具や器、本やレコードなどを置いている。

 「基本的にものは好きなんです。でもこの住まいにはなくていい。古い思い出も一緒にいったん整理したので、今は必要最低限のもの以外置かないと決めた。それが今の僕には気持ち的にも”整う”ことなんです」

文筆家・料理人 麻生要一郎さんの必要最低限しか置かないミニマルライフ。
左のリビングは30.6㎡。以前は6畳の小上がりの和室があったが一続きに。右の寝室は21.8㎡。ここにワークスペースも設けた。
文筆家・料理人 麻生要一郎さんの必要最低限しか置かないミニマルライフ。

麻生要一郎文筆家・料理人

料理人として活躍しながら、エッセイやレシピ集を多数刊行。近著に『僕が食べてきた思い出、忘れられない味 私的名店案内22』(オレンジページ)。

instagram.com/yoichiro_aso

photo : Tetsuya Ito edit & text : Chizuru Atsuta

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