FASHION 自分の好きを身に着ける。

アーティスト・浅野順子さんの装いの履歴書。オリジナリティと遊び心を持って唯一無二のスタイルを貫くこと。April 06, 2025

これまでの人生において、どのようなものを身に着けてきたか。選び取ったものには人となりや考え方が表れ、自分らしいスタイルをかたちづくる。アーティストの浅野順子さんの装いについて、最新号「暮らしと装いの、スタイルサンプル」より特別に公開します。

アーティスト・浅野順子さんの装いの履歴書。オリジナリティと遊び心を持って唯一無二のスタイルを貫くこと。
アトリエにて。デニムのシャツ、チノパンはともに〈キャピタル〉。首元にはスカーフを巻いて。アクセサリーはほぼ着けないが、サングラスや帽子は好き。

自分を知るために、少し先のビジョンを持っておく。

 「自由闊達な人」。アーティストの浅野順子さんを一言で表すとしたらきっとこんな言葉になる。本人は「今まで好きなことしかやってこなかったし、肩書なんて気にしたことなくて。今は絵を描いているから“アーティスト”?かな」とあっけらかんと笑う。20歳で結婚し、21歳で出産。音楽家のKUJUNさん、俳優の浅野忠信さんの母親であり、モデルのSUMIREさん、ミュージシャンのHIMIさんの祖母でもある。60代になってから絵を描き始め、アーティストとして創作活動を始めた。今回お邪魔したアトリエで、ほぼ毎日絵を描き、個展へ向けた作品づくりに励む。

アーティスト・浅野順子さんの装いの履歴書。オリジナリティと遊び心を持って唯一無二のスタイルを貫くこと。
アトリエでは個展のための新作の準備中。主な画材はアクリル絵の具。「インスピレーション源はこれまでの経験」
アーティスト・浅野順子さんの装いの履歴書。オリジナリティと遊び心を持って唯一無二のスタイルを貫くこと。
「バイオリンケースって置いておくだけで美しいの」。長年使ってきた古いクレヨンや画材はこの中にまとめて収納。

 ずっと心のままに生きてきた。とにかく他人と同じことが嫌いで、その思いは学生の頃から。

 「みんなと一緒の“制服”が嫌だったの(笑)。でも派手に変えることはできないから、襟の裏やスカートの裏を少しリメイクしたり、布を縫い付けたりして反抗してた。当時からオリジナリティを追求するようなところはありましたね。それに、今みたいにいつでもどこでもものが買えるような時代ではなかったから、おしゃれな子たちは自分で何かしら工夫して、手作りしていたのよね」

 青春時代は1960年代。海外からのファッションや音楽が大量に入ってきた頃で、ベトナム戦争を背景に、ヒッピームーブメントなどカウンターカルチャー全盛の時代でもあった。

 「最初のウッドストックのロックフェスが開催されたとき、私は19歳。その頃はロックを中心に、聴いている音楽にかなり感化されて、それに近いようなファッションも多かった気がします」

アーティスト・浅野順子さんの装いの履歴書。オリジナリティと遊び心を持って唯一無二のスタイルを貫くこと。
右上は10代、頼まれてモデルの仕事をやったとき。真ん中は40代、ロサンゼルスにて。左上は50代、他は60代のときのもの。スタイルは基本変わらない。

 仕事もいろいろ経験した。出産が早かったぶん、子育ても早々に終えたので、リメイクした服を販売したり、古着店やバーを経営したり、サーフショップを手がけたことも。

 「’90年代の頃、そのとき古着関係の仕事をしていたパートナーから急に『ロサンゼルスに行くぞ』って言われて、トランク空っぽのまま1か月ぐらい付いていったこともあって。現地で古着以外にサーフボードを買い付けてきたから、じゃあ、店を始めちゃおうかみたいな。あとは友達と古着店をオープンしたこともあった。そういう自由な生活をしてたのよね。ただ私に飽きっぽいところがあって、どれも長くは続かないんだけど(笑)」

 とにかくフットワークが軽くて、思い立ったら始めるのもやめるのも決断の早い浅野さんだが、これまで身に着けてきたものや、好きなスタイルは、若い頃から一貫して変わっていない。

 「古着が好きなので、ヴィンテージ感のあるものやリメイクもの、〈ZARA〉や〈H&M〉のプチプラ服も取り入れる。飾らないけど遊び心のあるものが好きですね。掘り出し物を見つけるのも上手なの。気に入れば、それが安いものでも長持ちさせちゃうタイプだし、逆に高いものでも気に入らなければ孫にあげたり、フリマで売ったり」

 よく着るのはデニムやカーゴパンツ、チノパンの他、スポーツウェア、ミリタリーなどメンズライクなものが多く、足元は〈ドクターマーチン〉のブーツやスニーカー。服は気分で選ぶけれど、全体のバランスは大事にしていて、その日のスタイルに合う帽子やサングラスは念入りに選ぶ。

アーティスト・浅野順子さんの装いの履歴書。オリジナリティと遊び心を持って唯一無二のスタイルを貫くこと。
奥のブーツは〈ドクターマーチン〉、スニーカーは黒が〈コンバース〉、水色が〈ZARA〉、レザーのスリッポンは〈キャピタル〉。
アーティスト・浅野順子さんの装いの履歴書。オリジナリティと遊び心を持って唯一無二のスタイルを貫くこと。
ブランド不明のレザーのリュックはシンプルなデザインで収納力があり、使いやすい。

 「毎日欠かせないのがサングラス。きちんとした格好のときでも、カジュアルな装いでもいいアクセントになる。ちょっとした洒落感も演出してくれるから。別に高いものじゃなくてもよくて、チープなものもたくさん持ってます」

 そう言って見せてくれたのは、韓国のプチプラブランドで300円くらいというスクエアフレームのサングラス。一方で〈レイバン〉や〈プラダ〉といった有名ブランドもある。他にもケースが気に入っているというアンティークのものや最新のエコ素材で作られたものまでさまざま。また、アクセサリーはふだんしないが、頂き物が多く、思い出の品として保管している。

 「ニューメキシコに行ったときに買ったナバホ族のターコイズ、友達がくれたサンゴのネックレス、シルバーのブレス。忠信が誕生日に贈ってくれた〈ラルフ ローレン〉の水晶のネックレス。どちらかというと、なくしたり落としたりする心配から気軽に身に着けられなくて。思い出が詰まっているからこそ、大切にしたいのよね」

アーティスト・浅野順子さんの装いの履歴書。オリジナリティと遊び心を持って唯一無二のスタイルを貫くこと。
毎日欠かせないサングラスの数々。ブランドや金額は気にしない。
アーティスト・浅野順子さんの装いの履歴書。オリジナリティと遊び心を持って唯一無二のスタイルを貫くこと。
アクセサリーは一か所にまとめて。右上の水晶のネックレスが忠信さんからの贈り物。手紙も一緒に取ってある。

 ルールや常識にとらわれることなく、自由にファッションを楽しんできた浅野さん。どうしたら自分らしいスタイルを築けるようになるのか。

 「自分に合ったものを選べるようになるには、やっぱり自分を知ること。私の人生は行き当たりばったりに見えるかもしれないけれど、若い頃からいつも少し先のことを夢見てきた。10年後にどうなっていたいか、なんとなくビジョンを描いておくと、自然とそっちに導かれるようになるのよ」

 イメージを持っておくことで、理想の自分と実際に置かれている今の自分を俯瞰して見ることができる。浅野さんは「その心の持ちようはどんな人でもできることでしょう」と教えてくれた。

浅野順子 Junko Asanoアーティスト

1950年、神奈川県生まれ。古着店やバーの経営などを経て、60代で独学でアーティストとしての活動を始める。2013年、初個展を開催。アクリルを使った絵画の他、立体のオブジェなども制作する。今年5月には個展を開催予定。

photo : Ayumi Yamamoto edit & text : Chizuru Atsuta

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