TRAVEL あの町で。
風光明媚な山間に佇む長門湯本温泉を巡る。ー 長門・山口県 ーStaying at Beautiful SpasJune 20, 2023 /〔PR〕
約600年もの歴史がある温泉は、今も地元の人、そして観光客にも愛されている。
日本ならではの懐かしい風景と新しいカルチャーが共存する温泉街へ訪れてみた。
新旧が混在し、新しい魅力を得た温泉街へ。
山口県北部の長門(ながと)市。ここに約600年の歴史を持つ、県内最古の温泉街がある。谷間を流れる音信(おとずれ)川に沿って、旅館や個人商店が並ぶ、長門湯本温泉。数年前から町を愛する人たちが集結して、懐かしい昭和の面影を残したまま、地域の人も観光客も喜ぶ再生プロジェクトが進められ、町並みはより美しくなり、移住者が開く店も増えてきた。
まず訪れたいのは、長年この地で親しまれてきた町のシンボルである立ち寄り湯『恩湯(おんとう)』。2020年春に新設した建物の真下には泉源があり、住吉大明神より授けられたといわれる温泉のありのままの泉源を湯船に浸かって眺めることができる。岩盤から湧き出る湯は"神授の湯"と呼ばれ、約1mの深さのお湯で体を温めるのは、なんとも神々しくありがたい。地元民が一番風呂を目指してやってくるのもよくわかる。向かいのレストラン『恩湯食(おんとうしょく)』では、名産の長州どりや地元野菜など、素材の味を生かした料理があり、お風呂上がりの体にすっと優しく入ってくる。
お湯と食の恵みに触れた後は、ギャラリー&カフェ『cafe&pottery 音』へ。長門は江戸時代から続く萩焼の産地でもあり、地元の深川窯を紹介する店では、代々、伝統的な技法を継承しながら、現代的なものづくりに挑戦する人たちの作品にも出合える。また最近では、『cafe and shop Tre(トゥレ)』やブリュワリー『365+1(サンロクロク) BEER』のように、移住して空き家を活用した店を開く人も多く、彼らの店も地元の人たちの暮らしになじみ、土地の魅力を高めている。さらに車でほんの少し足を延ばせば、湯治場で知られる俵山温泉もあり、ここにも焼き菓子の『ユーカリとタイヨウ』などができ、新しい息吹を感じられる。
恵みの湯に浸かり、周囲の店を散策しながら、四季折々に変わる木々の色が美しい川沿いを歩く。川床で光と風を感じ、カフェでひと休みして……。そんなふうに暮れゆく一日を思い思いにのんびり過ごしていると、町の人の笑顔や風景から包み込むようなやさしさを受け取ることができる。温泉、器、食、その伝統と新しさが心地よく融合する町のおおらかさに、誰もが再びこの地を訪れたくなるのだ。
車で長門湯本温泉までは山口宇部空港から約1時間半、山陽新幹線の新山口駅からは約1時間。公営駐車場に停めて徒歩で主要エリアを散策できる。電車では、新山口駅からJR山陽本線の厚狭(あさ)駅へ約30分、JR美祢(みね)線に乗り換えて長門湯本駅まで約1時間。そこから中心部は歩いて10分ほど。福岡の博多・天神からのバスも、片道約2時間45分で毎日運行している。長門湯本温泉から俵山温泉へは車で約20分。
photo : Yayoi Arimoto illustration : naohiga text : Asuka Ochi