INTERIOR 部屋を整えて、心地よく住まうために。
写真家・高橋ヨーコさんのMy Favorite Place。居場所のスタイルサンプル。vol.01March 31, 2025
日々の暮らしの中で、気づけば長い時間を過ごし、心に安らぎをくれる場所。何かに集中して向き合ったり、時には何もしないで物思いに耽ったり。中心に置かれた椅子をきっかけとして広がる、3人の居場所の話。最新号「暮らしと装いの、スタイルサンプル」より特別に公開します。

再び相棒になった椅子と部屋との縁。
20年以上を経て、高橋ヨーコさんは、昨年、以前暮らしていた部屋がある、都心のマンションに戻ってきた。アメリカへ渡り、帰国後は海の近くに家を構え、それとは別の拠点として再びここへ。
「ようやく仕事で稼げるようになり、やっと手に入れたあの頃の自分には城でした。部屋は違うけれど、時が巡り、もう一度同じところに拠点を持つことになるとは。思い出がある分、愛着はひとしおです」
暮らしのベースは神奈川・横須賀にある家のまま、当初、東京の一室は仕事の拠点にする予定だった。それが、「思いのほかここにいる」という。
「この端っこのスペースがすごくよくて」と愛おしそうに繰り返し、4畳ほどの小部屋をさした。
写真の色を見るのに向く照明が揃っていなく、プリンターもまだない。壁も塗り替え予定。つまり部屋としては未完成。でも一脚の椅子が、この部屋にとどまらせる。20年以上前にどこかで手に入れた、〈イルマリ・タピオヴァーラ〉のドムスチェア。
「海外暮らしの間は人に預けていて、帰国後私の元に戻ってきた、くっついたり離れたりな仲。ひとり、腰かける用の椅子感がすごくある、気楽な相棒です。古いものだからかどこかが緩んでいて、程よいグラつき感のある座り心地さえ気に入っています」

高橋ヨーコ Yoko Takahashi写真家
京都出身。大学卒業後、スタジオ勤務を経て独立。2010年、サンフランシスコに移住、’20年に帰国。現在は横須賀市の秋谷に暮らす。ファッション写真や広告写真を手がけるほか、国内外の旅先で写真を撮ることをライフワークに。
photo : Yoko Takahashi illustration : Izuru Aminaka text : Marika Nakashima