EVENT いま訪れたい場所、見たいもの。

台湾の離島・馬祖 (マーヅー) 島を歩いて楽しむ、アートと対話する時間。October 21, 2025

人と人、歴史、未来を繋いでいく創造。

《Letters from Matsu》。両面を馬祖色に染めた色とりどりのポストカードが窓ガラスに整然と並べられている。光を通して変化する色合い、フロアに差し込む移ろう影の連なりが美しい。
《Letters from Matsu》。両面を馬祖色に染めた色とりどりのポストカードが窓ガラスに整然と並べられている。光を通して変化する色合い、フロアに差し込む移ろう影の連なりが美しい。

台湾の離島・馬祖(マーヅー)島で台湾最大規模の島巡りアートフェス「馬祖ビエンナーレ(馬祖国際芸術島)」が11月16日まで開催中。

馬祖は連江県(リエンジアン)に属し、台湾本島の北西約200kmに位置する。 北竿(ベイガン)、東引(ドウイン)、南竿(ナンガン)、莒光(キョコウ/東莒島(トウキョトウ)と西莒島(セイキョトウ)の 4 郷 5 島と、数多くの小島から成り立っている。中国大陸に近いことから、中国福建閩東(フッケンビントウ)地方の伝統的な石造りの街並みや食文化、習俗を色濃く残していて、台湾本島とは違った景色を見られる土地だ。

第3回となるビエンナーレは、「拍楸(パーユー) —あなたの海、わたしの陸」がテーマ。「拍楸(パーユー)」とは、馬祖列島で行われる伝統的な漁法のこと。大勢の人々が協力して巨大な竹の杭を海中に打ち込み、定置網を固定することを指している。伝統的な漁業の知恵、海と共生する文化、共同体精神を現代アートで表現した作品が4 郷 5 島を舞台に、地元コミュニティとの協業で展示。

発電所、軍事拠点、新聞社、古民家、体育館、かつての映画館、バスなどが会場になっていて、50点を超える新作を含む75点、10以上のパフォーマンスが予定されている。

染料で大きめの紙に着彩してから1枚1枚カットしたアートワーク。
染料で大きめの紙に着彩してから1枚1枚カットしたアートワーク。

台湾、日本、韓国、香港、マレーシア、オーストラリア、アメリカ、スペイン、カナダの9つの国・地域から55組のアーティストが参加。日本からは、4組のアーティスト(柳幸典、木村崇人、米谷健+ジュリア、狩野朋子+中坪多恵子)が加わる。

アーティストユニット 狩野朋子と中坪多恵子の共同作品《Letters from Matsu》は、かつて軍人たちが過ごしていた、馬祖島・南竿の旧軍事施設にある。馬祖島は軍人が兵役のために駐留していた当時、輸送船が10日に1便しかなく、悪天候に見舞われると1カ月間通行できないこともある孤島だったという。

軍人の手紙や写真を印刷した羊皮紙を展示している。
軍人の手紙や写真を印刷した羊皮紙を展示している。
会場の視線の先には、開放的な海の景色が。歴史のうねりに想いを馳せ、眺めるのもいい。
会場の視線の先には、開放的な海の景色が。歴史のうねりに想いを馳せ、眺めるのもいい。

本作品は、空間に刻まれた過去の記憶と、軍人たちが残した手紙の記録にフォーカス。軍人の手紙にインスパイアされて来訪者が馬祖島から手紙を書く、対話の時間が空間を作っている。自己と他者、地域と世界との関係を見直すきっかけに出合えるはず。

Event Information馬祖ビエンナーレ(馬祖国際芸術島)「拍楸 —あなたの海、わたしの陸」

日時:開催中~11月16日(日)
会場:連江見馬祖列島(南竿、北竿、東莒、西莒、東引,5つの島々)
入場:無料(一部事前予約制) 

詳しくはこちら

text: Seika Yajima

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