INTERIOR 部屋を整えて、心地よく住まうために。
コーナーで個性が変わる、緩やかに仕切られた二人暮らしのワンルーム。August 18, 2025
必要なものを見極め、自分が気持ちいいと思える置き方、収め方を考える。一見手狭に感じる部屋も、使い方次第で大きな家よりも居心地のいい空間になります。収納や間取り、DIY、改装など、アイデアが詰まった16軒の小さな住まいを訪ねました。
&Premium141号(2025年9月号)「小さな家、小さな部屋」より、会社員・吹田奈穂子さんと永島啓太さんの住まいを特別にwebサイトでも紹介します。
家族が緩やかに繋がれる、心地よさ。
家の中を自由に歩き回り、人がいるところにどこでもついてくる、人懐っこい猫、むつ。ともに暮らす吹田奈穂子さんと永島啓太さんは「家族それぞれが自由に、心地よく過ごすために、ワンルームが一番快適な間取り」と口を揃える。
平日は仕事に没頭する時間が長いが、土日は家で過ごすことが多い。「休日はベッドで横になりながらむつとのんびり戯れる時間に心癒やされたい」と奈穂子さん。一方、啓太さんは料理や読書など、趣味の時間を楽しむ。空間を見通せるワンルームは、そのときどきで大事にしている時間が違っていても、家族が繋がりながら、無理なくおしゃべりを楽しめる良さがある。
この家は、賃貸の2LDKを設計士の手でリノベーションした空間。もともとあった天井や床、仕切りを取っ払っている。それによって、窓辺とその向かいにそれぞれ小上がりコーナーを作ることが実現。ワンルームを緩やかに仕切ることが叶った。小上がりにデスクを配置した場所に、以前はベッドを置いていたという。小さな空間でもそんなふうに模様替えをして、自由に使える余白がある。
「小上がりはベンチとしても使えて、ゲストの寛ぎ場にもなっています。棚板収納に並ぶ衣類のうち、僕のものは3ブロック程度。一時期、ミニマリスト的な生活に憧れていたこともあり、これで十分なんです。二人とも新しい服を購入したら、何かを売りに出して手放し、ものが増えない工夫をしています」と啓太さん。
視線を転じると、短い廊下に続くようにあるキッチンもまた、合理的なつくりになっているのが興味深い。
「キッチンの右側のシルバーは、内装工事で壁や天井の下地材として使われる軽量鉄骨をあえて剥き出しにしたもの。だから、マグネットをつけてよく使う包丁、フライパンの蓋、食器を拭くクロスなどを取りやすいようにしています。この家で暮らすようになり、料理が楽しくて。発酵料理を研究したい気持ちが芽生えています」と続ける。
コーナーごとに整理された心地よい居場所は、日々の生活の楽しみを拡張する装置になっている。


吹田奈穂子会社員
障害のある作家と文化創造を目指す会社〈ヘラルボニー〉に勤務。

永島啓太会社員
デザインやクリエイティブを扱うディレクター。
photo : Mitsugu Uehara edit & text : Seika Yajima