INTERIOR 部屋を整えて、心地よく住まうために。

快適に暮らすためのマイルールを大切に。インテリアデザイナーの小さな住まい。July 27, 2025

必要なものを見極め、自分が気持ちいいと思える置き方、収め方を考える。一見手狭に感じる部屋も、使い方次第で大きな家よりも居心地のいい空間になります。収納や間取り、DIY、改装など、アイデアが詰まった16軒の小さな住まいを訪ねました。

&Premium141号(2025年9月号)「小さな家、小さな部屋」より、インテリアデザイナー・佐久間重光さんの住まいを特別にwebサイトでも紹介します。

メタボリズム漂う空間を使いこなす。

快適に暮らすためのマイルールを大切にする、インテリアデザイナー・佐久間重光さんの家。
佐久間重光さんが暮らす部屋の主役はコーア・クリントのサファリチェア。新羅の壺や熱海の骨董店『湖心亭』で手に入れた小机のソバンなど、古物との取り合わせが美しい。
快適に暮らすためのマイルールを大切にする、インテリアデザイナー・佐久間重光さんの家。
ダイニングテーブルの上には中国・大理で作陶する孫宝坤の茶壺、渡邊心平の茶杯など、常に茶道具が置かれている。書は謝小曼の作品、後ろの和紙は古い蚕袋。

実は京都には数少ないヴィンテージマンション。なかでもひと際異彩を放つ物件を気に入り、10年以上暮らすのが佐久間重光さん。1973年に竣工されたこのマンションは、1960年代に日本で生まれた前衛建築運動・メタボリズムの影響を大きく受けている。全部屋が角部屋になるよう設計され、カクカクした間取り。コーナー窓も2つずつ備わっている。

「ユニークな意匠と、たっぷり入る陽射しと開放感に惹かれて暮らし始めました。コンクリートの壁で冬は寒いけれど、バスタブが大きいのもいい。マルチに使える畳の部屋も欲しかった。仕事柄いろんな物件を見ても、ここ以上の部屋はなかなかなくて」という。窓の外に金戒光明寺の三重塔、比叡山の姿が見えるのは、京都ならではの贅沢だ。

快適に暮らすためのマイルールを大切にする、インテリアデザイナー・佐久間重光さんの家。
足場板とアイアンを合わせた棚には、本と茶道具が収められている。右上のラオス・タリアン族の座卓のように吊るしたり引っ掛けたりしながら、床に置かないことを心がけている。
快適に暮らすためのマイルールを大切にする、インテリアデザイナー・佐久間重光さんの家。
佐久間さんは茶人としても活動。茶道具は山形〈山の形〉の桐箱に収納。
快適に暮らすためのマイルールを大切にする、インテリアデザイナー・佐久間重光さんの家。
窓の外には比叡山の姿。サボテンの台は古い薬箱。学生時代に『アンティークス タミゼ』と出合ってから古物も好きになったという。
快適に暮らすためのマイルールを大切にする、インテリアデザイナー・佐久間重光さんの家。
中国茶にまつわる道具を製作する〈佐久間美術〉の一式が収められた棚。

長く暮らす間に台湾の茶藝館『小慢』が展開する『京都 小慢』の立ち上げに携わり、店主・謝小曼との出会いから中国茶の道へ。

「見立てのセンスが素晴らしい小曼さんに出会ってから、なんでも茶道具に見えてしまって」と手に入れるものも増えたと笑う。やがて〈佐久間美術〉として中国茶にまつわる道具の創作活動も始めた佐久間さん。当然、茶道具や作品、工具や素材は増える一方。けれど広い部屋に引っ越すこともなく、快適に過ごせているのは以前から大事にするルールがあるから。

「一人で持てないものは手に入れない。床にはできるだけ物を置かないこと。黒い座面の椅子など、色を選べるものは黒に。色を揃えれば、要素が増えてもうるさく感じません」

木工作家・井藤昌志のオーバルボックスや古物の薬箱、照明など、質感や時代はさまざまでも整然としているのにはセオリーがあったのだ。

もうひとつ、空間デザインのキーになるのが照明だという。「いい家具を揃えてもライティングがダメなら台無しです。7つある照明はすべて間接照明にして、時間や過ごし方によって明かりを調整しています」

けっして少なくない物との付き合い方を熟知しているからこそ、もたらされる居心地。見立ての美とともに、橋爪悠也のアートやラバーダックなどの抜け感が個性となっている。

快適に暮らすためのマイルールを大切にする、インテリアデザイナー・佐久間重光さんの家。
リビング、キッチン、4.5畳の和室という構成。大きく取られた窓からの光を満喫すべく、シンプルな綿麻の布をカーテンに。

佐久間重光インテリアデザイナー

京都の店舗空間などを中心に活躍。本業の傍ら〈佐久間美術〉として主に煤竹を使った茶通や茶則などの製作を行う。茶人でもある。

photo : Yoshiko Watanabe illustration : Shinji Abe (karera) edit & text : Mako Yamato

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