LIFESTYLE ベターライフな暮らしのこと。
日本人が築いた、台湾紅茶100年の歩み。写真と文:リン・ピンチュン (台湾茶/台湾料理研究家) #1November 04, 2025

台湾紅茶の転機は、2025年の今からちょうど100年前の1925年に遡る。
当時、日本統治下にあった台湾で、日本の三井合名会社がインド・アッサム種の茶樹の栽培を始めたのがはじまり。そこから、紅茶生産が盛んになり、台湾の魚池郷(ユーチー)と埔里鎮(プーリー)エリアは、台湾紅茶の中心地として発展していった。そして、「紅茶の故郷」として知られるようになった。

栽培と改良が進められ、落ち着いたコクと甘み、モルティー(麦芽のような香り)に黒糖やカラメルのような余韻をもつ、台湾ならではの紅茶が生まれた。これが後に、「日月潭紅茶(リーユエタンホンチャ)」、やがて「Formosa Black Tea」として世界に知れ渡る。
今では、若い世代にも親しまれ、ティースタンドには、様々な品種やアレンジティーが並ぶ。100年前に、日本人が蒔いた一粒の種は、多様な品種と製茶技法へと花開き、台湾紅茶の豊かな文化と香りの礎を築いている。
今日はそんな歴史を感じられる、おすすめスポット2か所を紹介。

まずは、『茶業改良場魚池分場(チャイェカイリャンチャンユーチーフェンチャン)』。︎1936年に建てられたこの建物は、現在台湾で唯一現存する英国伝統様式の工場。初代の銅製機械が丁寧に管理されており、今もなお稼働している。この茶業改良場には「茶業文化展示館」が設けられており、現在は予約制のため、事前に申し込みが必要となる。
近くには猫囒山步道(マオランサンブーダオ)があり、100年前にアッサム種が栽培し始められた茶畑を眺望しながら歩くことができる。さらに山の頂点に行くと杉林の霧の道となり、時空を超えて昔の紅茶黄金期を思いながら、日本人と台湾人が共に育ててきた台湾紅茶のこれからの100年も楽しみ。

次におすすめするのは、8年連続で、日月潭紅茶品評会で第一位を受賞した名店『莊記茶業(ツアンジーチャイェ)』。ここでは、ミントやシナモンのような香りをもつ独特な風味の号「台茶18号”紅玉”」のほか、樹齢100年を超える「日月潭アッサム紅茶」も手に入る。時代が移り変わっても、かつて日本人が植えたアッサム種の茶樹は、今もなお、生命力旺盛に毎年新しい芽を吹き出し、今の台湾人、そして次の世代の台湾人にその味を届けている。
次の台湾旅行では、より深く、香り豊かな台湾茶を味わってみてほしい。
台湾茶/台湾料理研究家 リン・ピンチュン

























