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ジャン=リュック・ゴダール監督の思考の森へ。最後の長編映画『イメージの本』を再構成した映像インスタレーションが東京・新宿『王城ビル』で開催中。July 11, 2025

散りばめられた断片とともに、ゴダールの世界を巡る旅へ。

ジャン=リュック・ゴダール監督の思考の森へ。最後の長編映画『イメージの本』を再構築した展覧会が東京・新宿『王城ビル』で開催中。

『勝手にしやがれ』(1960年)や『気狂いピエロ』(1965年)などで、1950〜60年代のヌーヴェルヴァーグを牽引した映画監督、ジャン=リュック・ゴダール。彼が手がけた最後の長編映画であり、2018年のカンヌ国際映画祭でスペシャル・パルムドールを受賞した『イメージの本』(2018年)を元に再構成した映像インスタレーション「感情、表徴、情念 ゴダールの『イメージの本』について」展が、8月31日(日)まで新宿・歌舞伎町の『王城ビル』で開催されている。今回の展示のキュレーションを手がけたのは、10年以上にわたり晩年のゴダールと制作を共にしてきたスイスの映像作家、ファブリス・アラーニョさん。本展はこれまでスイスやドイツで行われ、日本では初めての開催となる。

ジャン=リュック・ゴダール監督の思考の森へ。最後の長編映画『イメージの本』を再構築した展覧会が東京・新宿『王城ビル』で開催中。
撮影監督として、ゴダール (右) と共同作業を行うファブリス・アラーニョ (左) 。

ゴダールが監督した『ゴダールの映画史』(1988年)以降の作品は、歴史や社会背景、芸術など様々な要素をコラージュする手法を用いながら、「映画とは何か?」という問いと向き合う表現へと発展していった。展覧会のもとになった『イメージの本』は、1世紀以上にわたる歴史や戦争、宗教、芸術の変遷を、新たに撮影した映像と様々な映画やアートを引用して、コラージュした作品だ。

展示は、1964年に開業した新宿・歌舞伎町の『王城ビル』の1階から4階までのフロアを使って、映画本編と同様、全5章で構成。60ものスクリーンやゴダール直筆のメモ、作品にまつわる書籍などが散りばめられている。映像や音楽は、映画と同じ素材で構成されているものの、5章ある各章を断片化し、引用される映像順序を常に変化させているため、訪れるたびにまったく異なる鑑賞体験を味わえる。何層にも重なり合う布のカーテンの間をくぐり抜けていくと、ゴダールの思考の森に入っていくような感覚がもたらされる。彼の視点を通しながらも、自分なりの解釈を編み出すことができる空間だ。

「この作品は、インスタレーションでも展示会でもない、『Living Projection(生きた上映)』だ」と語るファブリスさん。この展示を通して、決められたストーリーや枠組みから解放され、様々な感情の断片を拾いながら没入していく体験を通して、映画と出合い直すことができる。

ジャン=リュック・ゴダール監督の思考の森へ。最後の長編映画『イメージの本』を再構築した展覧会が東京・新宿『王城ビル』で開催中。
ジャン=リュック・ゴダール監督の思考の森へ。最後の長編映画『イメージの本』を再構築した展覧会が東京・新宿『王城ビル』で開催中。
ジャン=リュック・ゴダール監督の思考の森へ。最後の長編映画『イメージの本』を再構築した展覧会が東京・新宿『王城ビル』で開催中。
ジャン=リュック・ゴダール監督の思考の森へ。最後の長編映画『イメージの本』を再構築した展覧会が東京・新宿『王城ビル』で開催中。
ジャン=リュック・ゴダール監督の思考の森へ。最後の長編映画『イメージの本』を再構築した展覧会が東京・新宿『王城ビル』で開催中。

1階には、展示に合わせたグッズを扱うショップもオープン。また、『王城ビル』でかつて営業していた純喫茶を再現した『喫茶王城』も展示に合わせて復活。ゴダールの“眼”を通して、五感を研ぎ澄ませながら新たな鑑賞体験を楽しんでほしい。

Event Information「感情、表徴、情念 ゴダールの『イメージの本』について」展

キービジュアル

会期:2025年7月4日(金)~2025年8月31日(日)
会場:王城ビル
住所:東京都新宿区歌舞伎町1-13-2
開館時間:12:00〜20:00(入場は閉館30分前まで)
入場料:一般 ¥2,200

公式サイトはこちらから

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