LIFESTYLE ベターライフな暮らしのこと。

自分の足で探した、味わい深い中国茶。『みんげい おくむら』店主・奥村忍さんのお茶の楽しみ方。October 27, 2025

コーヒーとお茶にまつわるBetter Lifeのヒントを集めた、&Premium144号(2025年12月号)「コーヒーとお茶と、わたしの時間」より、『ADI』『Chiyaba』店主、『みんげい おくむら』店主・奥村忍さんのひと息つく時間、そのスタイルを訪ねました。

自分の足で探した、味わい深い中国茶。『みんげい おくむら』店主・奥村忍さんのお茶の楽しみ方。奥村忍さんが買い付けの旅で、中国南西部・雲南省の塔城という町を訪れたときに出合った茶葉カゴ。「旅に出るときは、このカゴに蓋碗、茶海、茶杯、コースターを収めて大事に持っていきます。ホテルでお茶を淹れるのが至福のとき」
奥村忍さんが買い付けの旅で、中国南西部・雲南省の塔城(ターチョン)という町を訪れたときに出合った茶葉カゴ。「旅に出るときは、このカゴに蓋碗、茶海、茶杯、コースターを収めて大事に持っていきます。ホテルでお茶を淹れるのが至福のとき」 
自分の足で探した、味わい深い中国茶。『みんげい おくむら』店主・奥村忍さんのお茶の楽しみ方。国内外で買い付けてきた民藝品が美しく並ぶ奥村さんのアトリエ。昼食を食べた後は、中国茶を淹れて休憩。プーアル茶を。 | 国内外で買い付けてきた民藝品が美しく並ぶ奥村さんのアトリエ。昼食を食べた後は、中国茶を淹れて休憩。プーアル茶を。
国内外で買い付けてきた民藝品が美しく並ぶ奥村さんのアトリエ。昼食を食べた後は、中国茶を淹れて休憩。プーアル茶を。
自分の足で探した、味わい深い中国茶。『みんげい おくむら』店主・奥村忍さんのお茶の楽しみ方。茶道具を選ぶ時間も、お茶時間の醍醐味。この日はミャオ族の敷布を敷き、インドで出合った石皿の上に平沢崇義の蓋碗を置いた。 | 茶道具を選ぶ時間も、お茶時間の醍醐味。この日はミャオ族の敷布を敷き、インドで出合った石皿の上に平沢崇義の蓋碗を置いた。
茶道具を選ぶ時間も、お茶時間の醍醐味。この日はミャオ族の敷布を敷き、インドで出合った石皿の上に平沢崇義の蓋碗を置いた。

奥村さんが旅先で出合ったお茶と、お茶にまつわるもの。

自分の足で探した、味わい深い中国茶。『みんげい おくむら』店主・奥村忍さんのお茶の楽しみ方。現地購入した中国茶や台湾茶を保存する茶缶 中国や台湾への”茶旅”で、茶農家や店を訪れるのは奥村さんのライフワーク。「茶缶に保管していたプーアル茶や烏龍茶の熟成が進み、思いがけない旨味に出合うことも」 | 現地購入した中国茶や台湾茶を保存する茶缶
中国や台湾への”茶旅”で、茶農家や店を訪れるのは奥村さんのライフワーク。「茶缶に保管していたプーアル茶や烏龍茶の熟成が進み、思いがけない旨味に出合うことも」
現地購入した中国茶や台湾茶を保存する茶缶
中国や台湾への”茶旅”で、茶農家や店を訪れるのは奥村さんのライフワーク。「茶缶に保管していたプーアル茶や烏龍茶の熟成が進み、思いがけない旨味に出合うことも」
自分の足で探した、味わい深い中国茶。『みんげい おくむら』店主・奥村忍さんのお茶の楽しみ方。お茶の出がらしを用いたポプリ お茶を飲み切った後はそのまま捨てずに、何種類かをまとめて天日干しに。「ほのかにいい香りがするので、お手洗いや部屋のコーナーにさりげなく置いています」 | お茶の出がらしを用いたポプリ
お茶を飲み切った後はそのまま捨てずに、何種類かをまとめて天日干しに。「ほのかにいい香りがするので、お手洗いや部屋のコーナーにさりげなく置いています」
お茶の出がらしを用いたポプリ
お茶を飲み切った後はそのまま捨てずに、何種類かをまとめて天日干しに。「ほのかにいい香りがするので、お手洗いや部屋のコーナーにさりげなく置いています」
自分の足で探した、味わい深い中国茶。『みんげい おくむら』店主・奥村忍さんのお茶の楽しみ方。旅先に持っていくお茶をまとめる保存袋 「買い付けの旅はハードなので、朝・晩にお茶の時間をつくります。お茶のセレクトは旅程や体調に鑑みて。例えば、暑い地域に行く場合は、軽やかに飲める白茶などを」 | 旅先に持っていくお茶をまとめる保存袋
「買い付けの旅はハードなので、朝・晩にお茶の時間をつくります。お茶のセレクトは旅程や体調に鑑みて。例えば、暑い地域に行く場合は、軽やかに飲める白茶などを」
旅先に持っていくお茶をまとめる保存袋
「買い付けの旅はハードなので、朝・晩にお茶の時間をつくります。お茶のセレクトは旅程や体調に鑑みて。例えば、暑い地域に行く場合は、軽やかに飲める白茶などを」
自分の足で探した、味わい深い中国茶。『みんげい おくむら』店主・奥村忍さんのお茶の楽しみ方。体系的な知識や最新情報を得られる専門書 中国茶の参考文献は、主に現地で制作されている雑誌など。「雑誌『知中』の特集『中国茶的基本』や『月刊茶道』はビジュアルも魅力的。中国語が読めなくても楽しめます」 | 体系的な知識や最新情報を得られる専門書
中国茶の参考文献は、主に現地で制作されている雑誌など。「雑誌『知中』の特集『中国茶的基本』や『月刊茶道』はビジュアルも魅力的。中国語が読めなくても楽しめます」
体系的な知識や最新情報を得られる専門書
中国茶の参考文献は、主に現地で制作されている雑誌など。「雑誌『知中』の特集『中国茶的基本』や『月刊茶道』はビジュアルも魅力的。中国語が読めなくても楽しめます」
自分の足で探した、味わい深い中国茶。『みんげい おくむら』店主・奥村忍さんのお茶の楽しみ方。四川省の喫茶文化が育んだ銅やかん 7〜8年使って経年変化した様が味わい深い。「四川省の茶館ではこうした銅やかんが使われていて、並んでいる様子がすごく綺麗。実際、注ぎ口が細くて使いやすい」 | 四川省の喫茶文化が育んだ銅やかん
7〜8年使って経年変化した様が味わい深い。「四川省の茶館ではこうした銅やかんが使われていて、並んでいる様子がすごく綺麗。実際、注ぎ口が細くて使いやすい」
四川省の喫茶文化が育んだ銅やかん
7〜8年使って経年変化した様が味わい深い。「四川省の茶館ではこうした銅やかんが使われていて、並んでいる様子がすごく綺麗。実際、注ぎ口が細くて使いやすい」
自分の足で探した、味わい深い中国茶。『みんげい おくむら』店主・奥村忍さんのお茶の楽しみ方。飲みきりやすい球状のプーアル茶 丸い塊に圧して固めた、5g単位で売られている茶葉。「プーアル茶は平べったい餅のような形をした357gサイズが規格ですが、これは飲みきりやすいサイズが嬉しい」 | 飲みきりやすい球状のプーアル茶
丸い塊に圧して固めた、5g単位で売られている茶葉。「プーアル茶は平べったい餅のような形をした357gサイズが規格ですが、これは飲みきりやすいサイズが嬉しい」
飲みきりやすい球状のプーアル茶
丸い塊に圧して固めた、5g単位で売られている茶葉。「プーアル茶は平べったい餅のような形をした357gサイズが規格ですが、これは飲みきりやすいサイズが嬉しい」
自分の足で探した、味わい深い中国茶。『みんげい おくむら』店主・奥村忍さんのお茶の楽しみ方。福建省の現代作家の蓋碗 多少の淹れにくさを感じても好きな蓋碗でお茶を淹れるのが奥村さんのスタイル。「薄い磁器製の蓋碗は、繊細でシュッとした外観がいい。綺麗な色のお茶に似合う」 | 福建省の現代作家の蓋碗
多少の淹れにくさを感じても好きな蓋碗でお茶を淹れるのが奥村さんのスタイル。「薄い磁器製の蓋碗は、繊細でシュッとした外観がいい。綺麗な色のお茶に似合う」
福建省の現代作家の蓋碗
多少の淹れにくさを感じても好きな蓋碗でお茶を淹れるのが奥村さんのスタイル。「薄い磁器製の蓋碗は、繊細でシュッとした外観がいい。綺麗な色のお茶に似合う」
自分の足で探した、味わい深い中国茶。『みんげい おくむら』店主・奥村忍さんのお茶の楽しみ方。広東省江門市新会区天馬村産の陳皮 陳皮を丸い形状に固めたもの。「中国では陳皮をお茶にして飲みます。少量を砕き、お湯を入れた蓋碗に入れて蒸らすととろみがある質感に。喉の乾燥を和らげてくれます」 | 広東省江門市新会区天馬村産の陳皮
陳皮を丸い形状に固めたもの。「中国では陳皮をお茶にして飲みます。少量を砕き、お湯を入れた蓋碗に入れて蒸らすととろみがある質感に。喉の乾燥を和らげてくれます」
広東省江門市新会区天馬村産の陳皮
陳皮を丸い形状に固めたもの。「中国では陳皮をお茶にして飲みます。少量を砕き、お湯を入れた蓋碗に入れて蒸らすととろみがある質感に。喉の乾燥を和らげてくれます」
自分の足で探した、味わい深い中国茶。『みんげい おくむら』店主・奥村忍さんのお茶の楽しみ方。福建省のギャラリー『原色茶陶』の茶葉 藝品や中国茶を扱う『原色茶陶』が交流のある農家の茶葉を買い上げて、好みの味に製茶したもの。「『漳平水仙』というお茶。炭焙煎で熟成した、野性味溢れる味がいい」 | 福建省のギャラリー『原色茶陶』の茶葉
藝品や中国茶を扱う『原色茶陶』が交流のある農家の茶葉を買い上げて、好みの味に製茶したもの。「『漳平水仙』というお茶。炭焙煎で熟成した、野性味溢れる味がいい」
福建省のギャラリー『原色茶陶』の茶葉
藝品や中国茶を扱う『原色茶陶』が交流のある農家の茶葉を買い上げて、好みの味に製茶したもの。「『漳平水仙』というお茶。炭焙煎で熟成した、野性味溢れる味がいい」

飲むたびに味の奥行きを感じる、クラシックな茶葉を楽しむ。

『みんげい おくむら』の店主・奥村忍さんは、民藝や国内外の生活道具、中国の少数民族が使い続けてきた民具を求め、月の3分の2は旅に出る。現地での“茶旅”にも、夢中になっている。

「買い付けをしていると皆が皆、お茶を出して振る舞ってくれます。もてなすのが好きで、それが文化になっている。中国の一大産業として在り続けているお茶ですが、僕は手仕事的な側面を残した最も民藝的なものだと考えていて。中国では生活様式の多様化で伝統的な手仕事のものが失われつつありますが、お茶が作られる現場にものづくりの魅力を存分に感じています」

 奥村さんは生活道具のみならず、お茶に関しても自分が体験して、感動したものを生活に取り入れ、人に紹介したいという一貫した考えがある。今年の春には、プーアル茶の産地である雲南省南部を訪れた。さらに中国の都市部にある「茶城」と呼ばれる茶問屋街を練り歩く冒険も続けている。

「気になった茶農家、茶城や茶藝館を訪れ、さまざまな種類のお茶を飲んでも自分が好きなお茶に出合えるかは、本当に未知数。実際、飲みすぎて飲み疲れてしまうこともよくありますが、自分が心からおいしいと思う、飲むと鳥肌が立ってしまうようなお茶に出合いたい気持ちが常にあります。いろんな寄り道を繰り返し、たくさんのお茶を飲み比べてわかったことは、僕はクラシックなお茶が好きだということ」

奥村さんが思わず唸る味わいは、華やかな香りだけを感じさせる表層的なつくりのものではない。

「最初の一口に、パッと華やかなアロマを感じるとインパクトが強く残るけど、簡単に作られているものはどうしても“煎が続かない”。力があるお茶は一煎、二煎、三煎と重ねるごとに味わいがどんどん深まっていきます。例えば、僕が好きな烏龍茶に炭で焙煎して作られているものがあって、それは一煎目では、茶の味わいはわかりやすく出てこないんです。一、二煎目に炭や焙煎の香りがぼわっと出てくる。その外側の焙煎の香りが取れたあとから茶葉の内側のエネルギーが出てくる。職人が炭火を熾し、茶葉を焙煎するときの火の温度のコントロールは、職人の技術に関わってくるところで、それが味に繋がっています」

福建省を旅したときに、同じ年に作られた炭焙煎と電気焙煎のお茶を飲み比べる機会があった。

「作り手の人たちは電気焙煎で作ったお茶のほうに自信があったようだけれど、自分は断然、炭焙煎のお茶が好みで。要は福建省の人の好みと僕の好みが異なっていただけなのですが、自分の好みの味を相手に伝えられると『じゃあ、こんなのはどう?』と提案してくれることも。それで、ピンとくるお茶に出合える確率が上がったりします」

 やっと出合えたお茶を愛おしみ、蓋碗で丁寧に一煎、一煎淹れていく。旅の幸せな記憶を思い出し、再訪することに思いを馳せながら。

自分の足で探した、味わい深い中国茶。『みんげい おくむら』店主・奥村忍さんのお茶の楽しみ方。沖縄の陶人・古村其飯の焼締めの茶器。「焼締めの器は濾過作用があるといわれ、味がまろやかになる。磁器の器と比べるとよくわかります」
沖縄の陶人・古村其飯の焼締めの茶器。「焼締めの器は濾過作用があるといわれ、味がまろやかになる。磁器の器と比べるとよくわかります」
自分の足で探した、味わい深い中国茶。『みんげい おくむら』店主・奥村忍さんのお茶の楽しみ方。奥村 忍

奥村 忍『みんげい おくむら』店主

国内外の手仕事の生活道具を扱うオンラインショップ『みんげい おくむら』を2010年にオープン。共著に『中国手仕事紀行 増補版』(青幻舎)がある。

photo : Yayoi Arimoto edit & text : Seika Yajima

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