TRAVEL あの町で。
寝台特急「北斗星」で、町の静けさに浸る。市川紗椰さんの忘れられない車窓風景。July 03, 2025
&Premium140号(2025年8月号)「心を整える、日本の旅」より、モデル・タレントの市川紗椰さんが旅する中で出合った忘れられない列車と車窓風景を特別にwebサイトでも紹介します。
宮城ー寝台特急「北斗星」

普段は見ることのできない、大都会の静かな姿。
物心ついた頃からの鉄道好き。同時に機械好きでもあるのであんなに大きな”メカ”は眺めているだけでも心が躍るし、車両ごとのデザインや音の違いを楽しんだり、ちょっとおかしな看板を見つけたり、私にとって鉄道は日常に欠かせないものです。
これまで日本はもちろん海外でも、列車に乗ることを目的とした旅をたくさんしてきました。なかでも車窓風景が強く心に残っているのは、惜しまれつつも2015年にラストランとなってしまった寝台特急・北斗星。札幌から上野までを繋ぐこの列車に初めて乗ったのは確か2005年のことでした。札幌から上野へ向かう上りの北斗星に乗り、辿り着いた朝4時台の仙台駅。普段は多くの人で溢れている駅のホームには人が一人もいなくて、まだ眠っている大都会の貴重な姿をこっそりのぞいているような、不思議な気持ちになったことを鮮明に覚えています。たった一人で遠くまで来た感じがして、大冒険に出たようでワクワクもするけれど、ひっそりと心が穏やかになるような。その後も、この車窓風景を味わいたくて、運行終了となるまでに10回以上乗りました。まだ定期運行しているものだと、東京発出雲行きのサンライズ号に乗れば、早朝の姫路駅あたりで同じような感覚を味わえるかもしれない、と次の旅を考えています。いつもの何げない風景を違ったものにしてくれるのも鉄道旅の魅力ですね。
寝台特急「北斗星」
1988年、青函トンネル開通に合わせて運行を開始した、上野駅と札幌駅を結ぶ寝台特急列車。食堂車やロビーカー、個室寝台を連結した編成で人気を集めた。2015年運行終了。

市川紗椰 Saya Ichikawaモデル・タレント
1987年生まれ。4歳から14歳までをアメリカで過ごす。音楽や映画、鉄道から相撲まで、幅広い趣味を生かした活動も多い。著書に『鉄道について話した。』(集英社)がある。
illustration : Shapre