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田園風景をゆっくりと旅する、日豊本線。中川たまさんの忘れられない車窓風景。July 02, 2025

&Premium140号(2025年8月号)「心を整える、日本の旅」より、料理家・中川たまさんが旅する中で出合った忘れられない列車と車窓風景を特別にwebサイトでも紹介します。

大分ー日豊本線

料理家・中川たまさんの忘れられない列車と車窓風景。
JR宇佐駅近く、田園風景の先にある山の上にUSAのオブジェが見える。宇佐駅は、駅名標にも星条旗のようなイラストが。

長旅の心を解きほぐす、USAのオブジェと菜の花。

 大分の杵築市は、父と母の故郷で、定期的に訪れています。品川から小倉までは新幹線で、そこから杵築まで特急列車「ソニック」に乗車する、片道6時間半の旅。なかでも特に好きなのは、大分の宇佐駅から杵築駅の間の車窓風景です。小倉から杵築に向かう車窓がどんどん田園風景へと変化し、宇佐駅を過ぎたところでは遠くに「USA」という大きなオブジェが見えるのもユニーク。これが見えてくると、ようやく辿り着いたなぁという安堵感がありますね。次の杵築駅の手前には、通称”菜の花鉄橋”と呼ばれる八坂鉄橋があり、春になると一面の菜の花畑の中をソニックが走行する区間があり、とても綺麗です。

 以前は旅をするときに飛行機も利用していましたが、30代を過ぎた頃からだんだんと電車のほうが好きになりました。青春18切符を利用すれば、気になるところで途中下車してその土地の名物をいただいたり、道中をゆっくり楽しめたりするのも電車のいいところ。昔は旅をするときはスケジュールを刻んでいろんな予定を詰め込んでいましたが、いまはメインの目的だけ決めて、他は行き当たりばったりで、その土地についてから決めるなんてことも増えました。刺激を求めるよりも自然体で向き合う旅が楽しくなってきたいま、車窓を楽しみながらゆっくりと移動する電車の旅が、なんだか心が落ち着きますね。

日豊本線

小倉駅を起点に、大分駅、延岡駅、宮崎駅および都城駅を経由して、鹿児島駅までの113駅を結ぶJR九州の鉄道路線。多様な自然や都市風景を眺めることができ、観光客にも人気。

料理家・中川たまさんの忘れられない列車と車窓風景。

中川たま Tama Nakagawa料理家

兵庫県生まれ。2004年ケータリングユニット「にぎにぎ」をスタートさせ、’08年に独立。近著に『せいろで日々ごはん のせて蒸すだけ、うまみがギュッと』(家の光協会)。

instagram.com/tamanakagawa

illustration : Shapre

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