LIFESTYLE ベターライフな暮らしのこと。
動物ジャーナリスト・森 啓子さんにとって「美しいもの」とは。October 01, 2025
「美しい」を見つめ直すためのヒントを探った、&Premium143号(2025年11月号)「美しい、ということ」より、動物ジャーナリスト・森 啓子さんの暮らしに寄り添う"美しいもの"を特別に紹介します。


森 啓子さんにとって「美しいもの」とは。

美には没頭してしまうし、崇拝もしたい。そして、心が和むというのもマストです。なので、今回のテーマは〝麗はしの和らぎ〞。私が撮影しているマウンテンゴリラの鼻紋も含めて〝美しいもの〞とは、アニミズムでいうカミのような存在ともいえます。40年くらい前に求めた紗袷の着物はその最たるもの。テレビ業界でショッピング番組を作っているときに出合い、なんてきれいなのだろう、と感動しました。絵柄が描かれた絽という生地の上に無地の紗を合わせて、絵を浮かび上がらせます。2枚の透ける生地が重なっているので、身に纏うと水紋のようにゆらめくんです。一年のうち2週間しか着られない儚さもあります。涼しさを視覚でも表現しようとする日本の繊細な美を感じます。悲しいことがあるとこれを撫でて、気持ちを癒やしています。江戸切子のお猪口は友人からのプレゼント。和食にも洋食にも合うので、ほぼ毎日、これで冷酒をいただいています。
森 啓子動物ジャーナリスト
テレビ業界を経て、2011年から本格的に動物ジャーナリストとしてマウンテンゴリラの撮影を始める。NPO法人「ゴリラのはなうた」主宰。
photo : Satoshi Yamaguchi edit & text : Wakako Miyake