LIFESTYLE ベターライフな暮らしのこと。
本当に“好き”を集めた王国。機能的で楽しく美しい、〈北欧、暮らしの道具店〉バイヤー・竹内敦子さんの家。May 13, 2025
居心地のいい暮らしをしている人たちというのは、たくさんの物に囲まれていながら、バランスよく飾り、見た目も麗しく収納しているものです。物があっても整えられている。機能的で楽しく美しい部屋を訪ねて、その使い方や工夫を見せてもらいました。
&Premium特別編集 「住まいを、整える」より、〈北欧、暮らしの道具店〉バイヤー・竹内敦子さんの住まいをWEBで特別に公開します。
直感だけに頼らない、自問自答のもの選び。

ECメディア〈北欧、暮らしの道具店〉でバイヤーを務める竹内敦子さん。数年前に新築した自宅は気持ちのいい吹き抜けと真っ白な螺旋階段がある2階建て。お邪魔すると、延べ床面積70㎡とは思えない広々とした開放感がある。その理由は圧倒的なものの少なさにある。
「日々ものを探すバイヤーという仕事柄、家具も雑貨も大好き。世界は素敵なものに溢れていて、気持ちの赴くままにお買い物したら、全部買っちゃいそうになるんです(笑)」
だからこそもの選びは慎重派。結果、納得いくものだけが選び抜かれた、すっきりした部屋が生まれた。
「ひとり暮らしをはじめたとき、以前旅した北欧のような雰囲気にしたいなと思っていたんです。100円均一などにもナチュラルな雰囲気の生活雑貨はありますが、毎日使うものだからこそ後悔したくない。毎日見ても『やっぱり好き』と思えるデザインはもちろん、日々の生活の中でストレスのない機能性に優れた道具を探して、少しずつ買い集めました」
家が完成して1年で新しく買った家具は、家を持ったら置こうと決めていた〈ハンス・J・ウェグナー〉の大型ソファくらい。リビングのラグもテーブルも食器棚も、本当にいいと思えるものを今も探している。
「あれば便利だし快適なんでしょうけど、私の場合は買って後悔することのほうが悲しい。それにもともとものを見るのが好きなので、探している間も楽しいんですよ」と笑う。
もの選びの極意は、いい面とそうでない面の両方を具体的に挙げてみること。これはバイイングの仕事でも徹底していることだ。たとえば石油ストーブ。最初に候補に挙がった〈アラジン〉はデザインが秀逸で、マッチやライターで着火する仕様も日々の楽しみになりそう。でも、今の生活にはスイッチひとつで着火できる〈コロナ〉のほうがきっとフィットする。デザインも納得できるもので、こちらに軍配が上がった。
いいなと思った瞬間、ネガティブな要素は見えなくなる。でも一度深呼吸して考えると、違った面が見えてくる。竹内さんの家のものの多くは、そんな自問自答を経てここにある。夫とつくった家も例外じゃない。
「たとえば吹き抜けは気持ちがいいですが、その分部屋数は減ります。この先、子どもができたらどうしようと考えたのですが、それでも対応できるよう、2階は細かく部屋を作らずオープンな空間に。ライフスタイルの変化に合わせて仕切りを入れて柔軟に対応できるようにしました」

ものには必ずいい面とそうでない面があって、きちんと目を向けると本当に必要なものが見えてくる。それは「今」と「未来」の暮らしに向き合うことでもある。竹内さんの暮らしの道具の中には、なりたい自分と未来への希望が宿っているのだ。


竹内敦子 Atsuko Takeuchi〈北欧、暮らしの道具店〉バイヤー
〈北欧、暮らしの道具店〉でマーチャンダイジングを担当。北欧を中心としたインテリア雑貨やオリジナルアイテムの販売、暮らしまわりのアイデアを発信。
photo : Mina Soma edit & text : Yuriko Kobayashi