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〈YORK.〉代表・ライフスタイルコーディネーター山藤陽子が考える器とお菓子の関係。ON THEIR TABLES 03 / February 16, 2021

家で食事をすることが増え、料理に合わせて器を選ぶ楽しさを感じている方も多いのではないでしょうか。陶磁器やガラス、漆器、世界各国の器など、17人の器好きたちに使い方を見せていただいた本誌No.67の特集「器と日々の生活」より、ライフスタイルコーディネーター・山藤陽子さんの器使いをご紹介します。

日本で初めて磁器が作られたのは、佐賀県有田。 17世紀初頭から有田を中心としたエリアで生産さ れた古伊万里を好み、コレクションする山藤陽子 さん。上質な白磁をキャンバスに、やわらかな青 藍色で絵付けした図柄や文様の手仕事に惹かれ、 少しずつ購入するうちに集まった。
日本で初めて磁器が作られたのは、佐賀県有田。 17世紀初頭から有田を中心としたエリアで生産された古伊万里を好み、コレクションする山藤陽子さん。上質な白磁をキャンバスに、やわらかな青藍色で絵付けした図柄や文様の手仕事に惹かれ、 少しずつ購入するうちに集まった。

ある種の〝快楽〞が得られる、繊細な絵付けとテクスチャー。

 インスタグラムを開いて「器」と 打ち込むだけで、店が買い付けてきたものや作家が自らアップした出来たての器の姿に簡単にアクセスできる時代。山藤陽子さんは、スマートフォンで器を見つけることや、ふらりと店に立ち寄って出合うこともある。そんなとき、器に対する向き合い方はとてもフィジカルだ。

「グラスはどんなものも受け入れる 〝器量〞 があるけれど、それでいて、何にも染まらない潔癖な感じが好き」と山藤さん。〈バカラ〉のオールドグラスがショーケースの中で煌めく。
「グラスはどんなものも受け入れる 〝器量〞 があるけれど、それでいて、何にも染まらない潔癖な感じが好き」と山藤さん。〈バカラ〉のオールドグラスがショーケースの中で煌めく。

「素敵な器を目にしたときに、まずは『触れてみたい』という衝動に駆 られます。もともとは作家や器の種類、物の来歴についてそこまで詳し いわけじゃないし、〝器好き〞 と言えるほどでもなくて。関心がぐんと 高まったのは、『菓子屋ここのつ茶寮』を主宰する溝口実穂さんとの出会いが大きいんです。彼女の作るお菓子は、素材の取り合わせ方が素敵。それによって生まれる食感や色彩感覚、器選びなどすべてが整った状態が気持ちよくて。きっと、彼女とは快楽に対する感覚が近いのかも。その感動を求めてたびたび茶寮に通っていたら、現代の作家にも興味を持つようになったんです」

来客時のおもてなしに焼き菓子を作ることも。山水図が描かれた古伊万里に盛り付けてみると、生地の優しい色みと呉須の相性の良さに気付く。
来客時のおもてなしに焼き菓子を作ることも。山水図が描かれた古伊万里に盛り付けてみると、生地の優しい色みと呉須の相性の良さに気付く。
広瀬陽の七宝焼 のリム皿。三谷龍二の木のカトラリーと木工作家・吉川和人のワークショップで作った というバターナイフとともに。
広瀬陽の七宝焼 のリム皿。三谷龍二の木のカトラリーと木工作家・吉川和人のワークショップで作った というバターナイフとともに。
苺と寒天のスイーツを安藤雅信の白マット釉の花形盛皿に。
苺と寒天のスイーツを安藤雅信の白マット釉の花形盛皿に。
食器棚はオークションで購入した日本の古道具。
食器棚はオークションで購入した日本の古道具。

 工芸品のように緻密に作られたお菓子の佇まいに五感を刺激された山藤さん。それがきっかけで器の好みに幅が生まれた。以前から好きだったものは、古伊万里だという。
「白い土で成形した素地の上に絵付け師が藍色の顔料を使って図柄や文 様を描いていますが、一言では言い表せない独特な色彩感覚と繊細さに日本ならではの美を感じます。同じ図柄を描いたものでも、ひとつひとつ表情が違うところも味わい深い。絵やイラストを鑑賞するときのように、これはどんな人が描いたのかな?と想像するのもまた楽しくて。古伊万里にも自分の好きな重さとか、手触りがありますね」
 頭で考えずに器そのものが放って いるバイブスを心と体で感じる。時間があるときはお菓子を作り、ひとときの穏やかな時間を過ごす。器との静かな対話を楽しみながら。

山藤陽子

山藤陽子
〈YORK.〉代表・ライフスタイルコーディネーター

「気持ちいい」という感覚でモノを選び、繋ぐ担い手として活動。パフューマーとして舞台などの空間演出やフレグランスの調香も手がける。

photo : Mitsugu Uehara edit & text : Seika Yajima
※『&Premium』No. 67 2019年7月号「器と日々の生活」より

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