あの人が大切にしている、暮らしの本。

写真家・長島有里枝さんが大切にしている、料理の本。『帰ってから、お腹がすいても いいようにと思ったのだ。』August 07, 2023

長島有里枝 _帰ってから、お腹がすいてもいいようにと思ったのだ。_誰かがふとんにもぐってくる気配があった。それで、ゆっくり目を開けてみると、隣には誰もいない。そんなことが2回あった。 晩ご飯の時夫に聞いてみたら、「どうしてるかの?思うたことが2回あったけど、襖は開けてみんかった」と、言われた。

料理には、その人の人生が反映されている。

エッセイが中心で各話に料理名が添えられ、そのレシピ集が巻末につくという面白い構成。病気や妊娠をきっかけに食べ物に向き合わざるを得なくなったタイミングで出合った本です。不可思議な出来事も解釈を入れずにただ受け入れる、著者の人格や料理が表れているのがこの一節。人にどう思われるか気にしない、かっこつけない。そのパンクさがとても信用できます。高山さんなら料理がどんな出来でも、それでいいってきっと言ってくれるだろうな。そんな寛容さを感じます。「夏野菜と鶏の南島風カレー」など、特別な食材は使わなくてもナンプラーで仕上げるといった独特の味つけが当時は新鮮で、何度作っても楽しかった。ときには苦痛にもなる主婦の毎日の料理を楽しみに変えてくれました。

Nagashima-books

『帰ってから、お腹がすいてもいいようにと思ったのだ。』著 高山なおみ (ロッキング・オン)

Yurie Nagashima

長島有里枝 Yurie Nagashima
写真家。武蔵野美術大学在学中に公募展を経てデビュー、カリフォルニア芸術大学MFA修了。武蔵大学社会学部前期博士課程修了。アーティスト活動のほか大学の講師も務める。近著に『こんな大人になりました』(集英社)。

illustration : Shapre text : Mick Nomura (photopicnic)

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