花屋『みたて』の「折々に見立てる、京の暮らし」

春の息吹を醸す「風流傘」。花屋『みたて』の「折々に見立てる、京の暮らし」 Vol.47July 14, 2022

花屋<みたて>に習う植物と歳時記 折々に見立てる 京の暮らし

四季折々に迎える歳時記を、京都の花屋『みたて』が植物を通して表現。一つの作品を通して、京都ならではの生活が見えてきます。

春の息吹を醸す「風流傘」。 みたて

春の息吹を醸す「風流傘」。

 京都三大祭のひとつ、葵祭は1500年もの昔に始まったと伝わる賀茂御祖神社(下鴨神社)と賀茂別雷神社(上賀茂神社)の祭。5月1日に上賀茂神社で行われる競馬会足汰式(くらべうまえあしぞろえしき)、3日に下鴨神社で行われる流鏑馬(やぶさめ)神事などの前儀を経て、クライマックスは15日に行われる路頭の儀だ。斎王代をはじめ、平安装束に身を包んだ500人もの人々が京都御所から出発して下鴨神社、上賀茂神社までを歩く。新緑にきらめく京の街をゆく行列は、競べ馬の騎手が乗る騎馬・乗尻を先導に最後を締めくくる牛車まで、平安絵巻さながらに連なる。その中ほどに登場するのが取物舎人(とりものとねり)の持つ風流傘。赤や白の牡丹や杜若(かきつばた)を飾り付けた大傘、山吹色の山吹の大傘が2本続けて通る様子は華やかさもひときわでいつも注目を集める存在。
「みたて」春の盛りのあしらいは、葉を間引いた山吹に和紙を合わせ仕立てた風流傘。本番の造花にはない可憐さが風情を醸し出す。葵祭を模した古い豆人形を合わせ、長い行列を切り取った。
 その名のとおり山吹の色が愛らしい山吹は、京都では松尾大社が名所。境内には3000株もの山吹が植えられ、一ノ井川沿いには山吹色の花を、上古の庭の奥では白山吹を愛でることができる。枝物とはまた違う、春の趣を楽しむのも一興だ。

photo : Kunihiro Fukumori edit & text : Mako Yamato
*『アンドプレミアム』2019年6月号より。


花屋 みたて

和花と花器を扱い、四季の切り取り方を提案する京都・紫竹の花屋。西山隼人・美華夫妻がすべてを分担し営む。

hanaya-mitate.com

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