&Theory
July 19, 2022 / 〔PR〕 私らしく生きる、私のセオリーの話。
漫画家・ひうらさとるさんの城崎での暮らし。
自分にとって大切な価値観と素直に向き合い、自分らしく生きる人たち。
彼女たちに共通するのは、確かな意志と自分なりのセオリーを持って暮らしていること。
ここでは、都心を離れ、兵庫・城崎温泉から情報発信を続ける、
漫画家・ひうらさとるさんの暮らしを紹介します。

移り住んだ街と深く関わり、柔軟に暮らす。
兵庫県の北部に位置する豊岡市は、日本で最後の野生のコウノトリの生息地としても知られる風光明媚な豊かな自然に抱かれた場所だ。ここには、志賀直哉の代表作『城の崎にて』の舞台となった開湯1300年を数える城崎温泉がある。7つの外湯や柳並木が美しい大谿川(おおたにがわ)など、昔ながらの風情あふれる街並みが残るこの地に、漫画家のひうらさとるさんは夫の田口幹也さんと中学生になる娘との3人で暮らしている。
「東京に暮らしているときに東日本大震災があり、それを機に夫の実家がある兵庫県豊岡市の神鍋エリアに移りました。しばらくは東京と2拠点を行き来する暮らしを続けていましたが、夫に城崎での新たな仕事の話があり、住まいを移す必要が出て。それが2015年。仕事のほうは、娘が生まれたぐらいのタイミングで、紙からデジタルへの移行にトライしていて、2拠点生活中も全く問題がなかった。打ち合わせもオンラインで可能で、離れた場所からアシスタントさんへの指示もできますしね。何より、何度か訪れたことがあった城崎の温泉街に暮らすことに興味があった。面白そう!って。迷いはありませんでした」
ひうらさんの朝は早い。毎朝、5時には起床して3階のリビングに連なる仕事場へ。習慣としている一杯の水を飲むことから始まり、思いついたアイデアを付箋とノートを使って整理、iPadでの漫画の執筆、そして2021年1月から取り組む音声プラットフォーム「Voicy」の音声収録もスマホ一台でスイスイと進めていく。7時ごろに幹也さんが起きてきて、二人でコーヒーを飲む。その後は、デスク付きのエアロバイクに乗りながらメールの返信やスケジュールの整理、ニュースを見て情報のインプットをする。
「東京にいた頃から仕事は朝型。寝起きの脳が整理されたタイミングの方がアイデアも出やすく、家族が起きてくる前のほうが一人の作業に没頭できる。音声収録も周りに人がいると少し恥ずかしいですしね。こういう話をすると『早朝から計画的にお仕事に取り組んでいますね』と言っていただくこともありますが、実はそういうつもりはないんです。午後の仕事も18時には終えるようにしていて、その後は趣味にあてたり、おいしいごはんを食べたり……ゆっくり自分の時間を過ごしたい。そこから逆算して考えたら、自然にこのやり方になりました」
デジタルでの作画にトライすることや音声発信を始めることも、ひうらさんにとっては“普通のこと”という感覚だという。
「30歳ぐらいでインターネットを始めて、わからないことを人に聞く、先行している人の真似をすることに抵抗がなくなった。私の場合、移住のために漫画をデジタルに移行したわけではなく新しい手法に興味を持ったからで、その過程で10代から続けてきた絵を描くことに新鮮な発見を見つけられたのも良かった。Voicyも『何か面白そうなことがあればとりあえずやってみる』という性格だから。思えば、移住に対して迷わなかったのもこの性格だからかもしれませんね」
「城崎は古くからの歴史と伝統がある街でありながら、毎年多くの観光客が訪れるためか、閉鎖的な空気感がなく、街のみんなが合理的な考え方を持っているところも気に入っています」
“まち全体が一つのお宿”という考えを持つ城崎では、各旅館の収容人数に応じて内湯の大きさを細かく取り決めた条例があり、ひとつの旅館で観光客を囲い込むのではなく、大浴場を楽しみたい人には浴衣に着替えての外湯巡りを促したり、街の飲食店での食事を勧めたりと、街全体でのおもてなしを掲げることで、結果的に活気のある街並みを作り出している。そんな街全体が持つオープンな雰囲気に惹かれるように新たな人が集まり、魅力的なショップのオープンも相次いでいる。
「私たちが城崎に住んでからの7年でも、随分と街は変わりました。東京をはじめとしたさまざまなエリアからクリエイターが訪れ、旅館のリノベーションや新しいショップの内装を手がけてくれたり、移住して新たなビジネスを始める人がいたり。この秋には、姫路の和菓子店『井上茶寮』の二人も城崎に移ってくる予定。他にも、アーティスト・イン・レジデンスである『城崎国際アートセンター』には、国内外からアーティストが訪れてアートや演劇を制作するため、完成された姿だけでなく、ワーク・イン・プログレスを楽しむことができる。きっと東京だったら、もっとかしこまった出会いになりそうなところも、日常から離れた城崎の風景もあってか、距離感も近い。日々新たな交流が生まれ、新たな刺激を与えてくれる。それも城崎のいいところの一つですね」
「城崎国際アートセンター」のエントランスホールには、リモートワークに活用できるスペース「WORKATION IN TOYOOKA @KIAC」が新たに誕生したり、昨年末には温泉街へと繋がる商店街の一角に約3000冊の本を備えたブックカフェ『短編喫茶 Un』もオープンした。そんな伝統と新たな文化が交差する城崎でも、ひうらさんが「欠かせない場所」と語るのが、住まいのすぐ隣に位置するカフェ・レストラン『OFF.KINOSAKI』だ。
「週2〜3回は通う、“我が家の第2の食卓”です。地元の食材を使った料理やワイン、どれもがおいしいのはもちろん、ここでの交流も大切な時間。お店のスタッフと、東京から遊びに来た友人と。ここでの会話が新しい仕事に繋がることも。ときどき『ここは東京!?』と思うほど、いろいろな人が集まったりもして面白いです。意識せずとも新しい情報を受け取れる場所が身近にあるのは、城崎に暮らす上でとても大きいですね」
東京には多くの友人がいる。また、演劇や映画、アート鑑賞が好きだというひうらさんにとっては魅力的なイベントにすぐに足を運べる場所でもある。長く暮らした場所を離れることはひうらさんの意識をどのように変えたのだろうか。そして今、心がけていることについて話を聞いた。
「東京にいた頃は便利な場所に住みたいという思いがあり、その頃に比べたらライフスタイルは変わったかもしれません。でも、子どもが生まれた頃の私には東京は情報量が多すぎると感じることもありました。そんな東京を一回離れたことで改めて感じた魅力がある。そしてこっちに移り住まなければ体験できなかったこともたくさんあります。神鍋に住んでいるときに初めて野生の蛍を見て感動したのもそうですね。東京にいた頃は『いつでも会える』と思いながら数年会っていなかった友達が訪ねてきてくれるのもうれしいし、東京で観たい演劇、会いたい人がいれば城崎からでもすぐ行ける。あくまでも暮らす場所は起点。ここからいろいろなことに取り組んでいきたいですね」
新しい仕事の手法や情報発信を柔軟に取り入れる。足取り軽くさまざまな場所に出かけて、多くの人と出会う。公私をバランスよくポジティブに楽しむひうらさんの暮らしは、城崎の街に流れる開放的な空気感と共鳴しているかのようだ。
1.まずはやってみる、の気持ちを大切に。
2.早朝のアウトプットで一日のリズムをつくる。
3.行きたい場所に行き、会いたい人に会う。
ひうらさとる Satoru Hiura
漫画家
大阪府出身。18歳の時にデビューし、上京。約20年東京で暮らす。その後、2011年に兵庫県へ移住。2015年から城崎在住。講談社Kiss で連載されていた『ホタルノヒカリBABY』全6巻が発売中。アプリPalcyで『聖ラブサバイバーズ』、講談社ビーラブで『西園寺さんは家事をしない』を連載中。Voicyでは「ひうらさとるの漫画と温泉」を発信する。
http://satoru-h.com/
photo:Tetsuya Ito hair & make-up:Miki Nakamura(UROCO)