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Book

This Month Themeひとりの時間が充実する本。

選・文 / おへそ書房 / May 14, 2020 本屋が届けるベターライフブックス。
『硝子戸の中』夏目漱石 著(新潮文庫)

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「硝子戸の中(うち)から外を見渡すと、霜除をした芭蕉の、赤い実の結なった梅もどきの枝だの、無遠慮に直立した電信柱だのがすぐ眼に着くが、その他にこれと云って数え立てるほどのものはほとんど視線に入って来こない。書斎にいる私の眼界は極きわめて単調でそうしてまた極めて狭いのである——」
晩年の漱石が、わずかに外界とつながる硝子戸の中に見出した39の景色と記憶。子供の頃のこと、飼い犬、焚き火で煤けた末娘の顔。不愉快に充ちた人生、若い女性の悲痛な記憶。戦争、大病など豊かさとは対極に追い詰められ、次第に死へと傾きつつあった漱石が独り居の中にあって、生をただただ傍観するかのように、静かな筆致で描いた少文集、そこに微かに見え隠れする優しい肯定。「そんなら死なずに生きていらっしゃい」。


oheso books おへそ書房

子どもも大人も、おとしよりも気軽に立ち寄れる、気さくな本屋。文学・美術・建築・自然科学・絵本・料理・趣味の本などを主に取り扱っている。
住所:東京都武蔵野市境2-3-20
電話:0422-69-0722
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