Music土曜の朝と日曜の夜の音楽。

July 14, 2017 今月の選曲家 cero

July.14 – July.20, 2017

Saturday Morning

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Title.
I Do Like To Be Beside The Seaside
Artist.
Reginald Dixon
小学生の頃、馬が好きで休みの日は朝から一人で府中の競馬場に出かけていた。馬券も買えないので、ひたすら馬の写真を撮り、後日その写真を見本にして馬の絵を描くことにハマっていた。競馬場のフードが遊園地以上に充実していることとか、コースの真ん中にある公園や芝生の広場がけっこうくつろげることとか色々知ったけれども、思い出すのはレース前のファンファーレが流れる時間がドキドキするものだったなということ。音楽というよりはこういった状況が僕は好きなようで、高校野球のブラスバンドの応援とかも、その光景にグッときてしまう。“ある瞬間”のために寄せられた祈りのようなものとして。沢山の楽器で奏でられるファンファーレ音楽(勝手に命名)を、レジナルド・ ディクソンはオルガン一台で奏でる。ファンファーレ音楽の生み出すワクワク感、そしてオルガンの音色が奏でる爽快感は土曜の朝にわりと合うのではないでしょうか。(橋本翼)
アルバム『I Do Like To Be Beside The Seaside』収録。

Sunday Night

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Title.
Alicate
Artist.
Hermeto Pascoal
ここ数年、まとまった時間を見つけてはアジアを中心に海外旅行に出かけるようになった。アジアの混沌とした街並みにブラジルのエルメート・パスコアールの音楽がよく合うのを発見したのも最近のことだった。ある旅行の帰り道、トランジットのために降りた中国の空港で濃霧のためフライトがキャンセルとなり、足止めを食らったことがあった。数時間待ってもフライトの目処が立たないため、航空会社が用意してくれたホテルで連絡を待つことになった。滞在した街は土地勘もなく、濃霧で50m先の景色も見えない、出会う人には片言の英語も通じない。ホテルでじっとフライトの連絡を待つのみだった(中国はSNSも一切つながらない)。フライトの可能性が生まれるたびに昼夜問わず部屋のベルが鳴り、ロビーに集合して空港に向かう。そこから数時間待つも、やはり悪天候のためフライト中止となりホテルに帰る、そんな状態が2〜3日続いた。そろそろ日本に帰らないと仕事に間に合わなくなる。追い込まれてきた日曜の夕方、ふたたび空港内で数時間待つもまた中止になりそうな雰囲気の中、何がどうなったのかわからないけど急遽フライトが可能になった。外はまだ霧が凄いんだけど、とにもかくにも日本に帰れる。不安感や安堵感に包まれながらの数時間のフライトを経て、窓から見えた日本の夜に灯る明かりはこの曲の0:31〜のようだった。日曜の夜はどこか憂うつな時間だと思っていたけれど、幸せな時間でもあるんだなと思った。心持ちが変わったとき、エルメートはまた新たな景色を見せてくれる。(橋本翼)
アルバム『Blazilian Adventure』収録。

ミュージシャンcero

髙城晶平(Vo、Gu、Flu)、荒内佑(Key)、橋本翼(Gu)。Contemporary Exotica Rock Orchestra 略して「cero」(セロ)として、2010年にデビューを果たす。全員が楽曲を制作するオルタナティブなスタイルと楽曲の嗜好性の幅広さ、ライブ活動が多くのリスナーに支持されている。 http://cero-web.jp/