Art素顔の芸術家たち

This Month Artist: Antoni Gaudi / October 10, 2016 アントニ・ガウディ

Author

河内 タカ

gaudi
Antoni Gaudi
1852 – 1926 / ESP
No. 035

スペイン、カタルーニャ出身の建築家で、19世紀から20世紀にかけてのモデルニスモ期のバルセロナを中心に活動した。サグラダ・ファミリア・グエル公園・カサ・ミラをはじめとしたその作品はアントニ・ガウディの作品群として1984年ユネスコの世界遺産に登録されている。革新的とも斬新ともいえる建築デザインにより、史上最も革新的な建築家と評価されているものの、実際に高い称賛を得たのは没後であった。1926年6月7日夕刻、ガウディはバルセロナ市内で路面電車にはねられ死去。遺体はサグラダ・ファミリア聖堂に埋葬されている。

未だ終わらない建築
アントニ・ガウディの「サグラダ・ファミリア」

 スペインのバルセロナにある有名な建築といえば….. まあ、ほとんどの人がこの大聖堂のことを思い浮かべるはずです。そう、アントニ・ガウディの「サグラダ・ファミリア」のことです。そして、この世界的に最も象徴的な宗教建築は、グラナダのアルハンブラ宮殿やマドリッドのプラド美術館を抜いてスペインで最も観光客を集める超人気スポットでもあるのです。

 サグラダ・ファミリアとは、 「サグラダ=聖」と「ファミリア=家族」を意味し、マリアとヨゼフとイエスの三人のことを指しているそうですが、この建造にはすでに130年以上の年月が費やされているにもかかわらず、今もなお建設が進められているという「未完の建築」としても知られています。しかし、ミラノのドゥオーモ(大聖堂)を作るのに約500年、ケルン大聖堂にいたっては実に600年以上の年月がかかったことを踏まえれば、着工時点の1882年で300年はかかるだろうと予想されていたのが(つまり完成予定が2182年!)、現段階では2026年の完成を目指しているとのことで、比較的早いペースということになるんですけどね(笑)。

 このサグラダ・ファミリアの設計は、もともとはフランシスコ・ビリャールなる別の建築家に任されていました。しかし、わずか1年で教会側と折り合いがつかなくなり、当時ほとんど無名建築家だったガウディに大役が回ってきます。敬虔なカトリック信者であったガウディは、30代終わりころから約40年以上を費やし、特に人生最期の15年間をこの大仕事に全精力をつぎ込んだのですが、結局、生前の彼が見ることができたものとは、地下聖堂部分とファサード、そして18本作られるべき尖塔のうちの最初の1本のみでした。

 しかも、ガウディはちゃんとした設計図が紛失したか、またはそもそも詳細を書き残していなかったため、没後は模型や職人による伝承や大まかな外観のデッサンなどを基づいて、今に至るまで作業が続けられてきました。また、この建物は常に称賛されていたわけではなく、少しずつ出来上がっていくにつれてだんだんと評価されていったという背景もありました。奇抜すぎるこの芸術的建築物が非難にさらされ、紆余曲折ありながらも、これまでどうにか継続されてきたのも、その時々の職人たちが「ガウディの意思を汲み取り、いつか必ず完成させよう!」というモチベーションを抱き続けられるような強力な磁力みたいなものがあったからで、実はそんなところがサグラダ・ファミリアをさらに魅力的なものにし、また時代を超えて愛されてきたんじゃないかと思うのです。

 特徴的なオーガニックな曲線や細部にわたる装飾、そして自然からのモチーフを取り入れるユニークな様式を得意としたアントニ・ガウディ。その背景には幼少期に患ったリウマチによって走り回れなかったために、おのずとひとり小さな生き物や草花をひたすら観察していたことが、独創的ともいえる装飾を生み出したと言われているんですが、ガウディの没後100周年目にあたる10年後に、この偉大な聖堂の美しく完成された姿を見せてくれるのを今から楽しみにしておくとしましょう。

Illustration: Sander Studio

gaudi

『Gaudi: 1852-1926 Antoni Gaudi i Cornet – A Life Devoted to Architecture (Architecture & Design)』(Rainer Zerbst)世界中のアートファンを魅了し、今でも多くの人々をスペインへと導く、ガウディの建築。そんな、アートと建築に一生を捧げた彼の歴史を文章とイラストで辿る一冊。


文/河内 タカ

高校卒業後、サンフランシスコのアートカレッジに留学。NYに拠点を移し、展覧会のキュレーションや写真集の編集を数多く手がけ2011年に帰国。アマナの写真コレクションのディレクターに就任。2016年には自身の体験を通したアートや写真のことを綴った著書『アートの入り口(アメリカ編)』と続編となる『ヨーロッパ編』を刊行した。現在は、京都便利堂において写真の古典技法であるコロタイプの普及を目指した業務に携わっている。